第17回 FINTECH 人工知能学会 金融情報学研究会(SIG-FIN)に出席した感想

今回は、第17回 FINTECH 人工知能学会 金融情報学研究会(SIG-FIN)に10月8日(土)10〜17時に出席してきましたので、発表の要旨や感想についてまとめます。

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人工知能学会に初参加

私は、金融系の学会に出席するのは今回が初めてで、学会の開催場所は東大の本郷キャンパス。事前に配布されたスケジュールでも、タイトルを見ただけでも頭が痛くなりそうなテーマが9つもあり、行く前から頭が痛かったです。

しかし、蓋を開けてみると、やはり辛かったですw
ただ、発表されている方、オーディエンスともに、とても知的且つ紳士的な方が多く、学会の雰囲気もオープンでフレンドリーだったので、肩に力を入れず楽に発表を拝聴させていただくことができました。

さて、肝心な中身ですが、内容的には我々が進めている資産運用支援サービスプロジェクトで課題になっている問題解決の参考になることが要素が多く含まれている発表が多く、非常に勉強になりました。発表者は、大学関係の研究者の方より、どちらかというと日系、外資系の金融機関関係の方が多く、発表の内容にも市場の臨場感があり実践的な内容の濃いものが多い感じがしました。

第17回 FINTECH 人工知能学会 金融情報学研究会(SIG-FIN)

それでは、発表順に発表のメモを共有させていただきます。私は工学系でもなく、金融もまだ駆け出しなので、テーマに関する理解が足りず稚拙なメモで、あまりまとまっていませんが、ご了承ください。個々の論文については、公開されていますので、興味のある方は下記からダウンロードしてください。

http://hawk.ci.seikei.ac.jp/sigfin/17/SIG-FIN17_all.pdf

○基調講演

2015年からAIが普及
スペインではお笑いを笑顔認証して笑いを評価、課金 → 30%売上アップ
バスケットの実践にデジタルデータを採用 → 若年層を増やした → アプリを作る人が増えた → 広告収入3倍
ゴミの量をセンサーで図る → 回収タイミングとルートを最適化 → コストを3分の1

金融の企業立地は変わりつつある
ライバルはネット企業、Google、Apple、Rakutenなど

Gatebooks→おたくの理想のお嫁さんを育てるホログラム 変だけど発想が面白い。こういう余裕がないとFINTECH分野でもイノベーションは起こらない。

サービスを作る時は、全体のエコシステムを考えながら構築する 例えば、資産運用サービスをGoogleカレンダーに連携させるなど

1. ARCHモデルのミクロ的基礎づけの試み

Agentモデルのマクロモデルへの応用
ARCHモデル
人工市場モデルを用いたシュミレーション
ミクロ変動そのものに基礎にシュミレーション
ミクロを基礎づけでマクロが現象として表現される。マクロから入るのは気持ち悪い

◆結局何がわかったか
価格変動が需要の差に比例する
予想価格のバラ付きが大きければ大きいほどリターンも大きくなる
ノイズトレダーの売買注文数量 ?
需給の差が大きければ大きいほどボラタリティが大きくなる
投資家の予想価格のば らつきと需給の歪みが大きくなるとボラティリティは大きくなる
投資家のリスク回避度が小さくなるとボラティリティクラスタリングは大きくなる

感想:数式も説明も、よくわからないが、当たり前のことを数式化しただけなのか? 正直よくわからなかった。

2. 効果的な取引時間延長の検証

取引時間が長くなると市場にどのような影響を与えるのか、ボラタリティはどうなるのかを検証

現状 夜間取引は参加者が少なく値動きが荒い

どういった取引時間延長が有効なのかが今回の研究の課題

アメリカの場合は、プレマーケットセッション、夜間マーケットセッションが延長されている

モデル
−無リスク資産とリスク資産
−配当は0とする

プレマーケットセッションの効果

セッションの時間が長くかつ、時間外取引の市場参 加者が少ない場合
 価格効率性悪化、
 価格安定性低下
 寄り の取引集中
 全体として悪影響を及ぼす
 ただし、短時間延長の場合は若干改善される

アフターマーケットセッション
 市場参加者が低いと価格効率性が下がる
 価格安定性も市場参加者が低いと、価格安定性も下がる
 引けの安定性、取引集中は、わずかにメリットがあるかも
 どちらかというとデメリットの方が多い
 ただし、短時間延長の場合は若干改善される

結論としては、取引時間の延長についてはもっと入念の議論をしたほうがいいのではないか?

感想:開場時間を長くすると市場にとって、いい事ばかりではないというのは以外だった。

3. ★ 深層学習とウェーブレットを用いた多変量時系列予測器

時 系 列 解 析 ( FAVAR )、深 層 学 習 (Stacked-LSTM)、ウェーブレット解析の 3 つ を組み合わせ、様々な時系列の経済指標(例:ドル円)などの予測モデルを開発した ??マジかよ?

どのような変数を選んで回帰モデルを組むかがアナリストの腕の見せ所→これをAIに模倣させた

予測器の特徴は、任意に集めた時系列デー タから、目標とする変数の予想に役立つパターンを 発見し、有効なファクターに集約 ??日経でやってることか?

結論として、、ドル円レート、TOPIX、 鉱工業生産などでは、VARより精度が上がった

AI vs VAR

257くらいの変数を利用(なんかGoogleの変数数と似てないか?ww)
VARモデル
 単なる自己回帰
プロの変数選択 > VAR
 予測実務家の恣意であり、腕の見せどころ
今回の予測期 > VAR
 変数選択を自動にやってくれるモデル
 完全にイチゼロではなく、重み付けするモデル
バーナンキの発表がモデルが元になっている
バーナンキは主成分分析を用いてファクターを推定 → これをAIで実装できる
経済学でも多用されるモデルで、市民権を得ている

ウェーブレット変換による多重解像度解析
 ウェーブレット変換のデータで学習させると精度が上がる
 
1998年〜2015年までを学習させた
 ドル円で検証すると1ヶ月先だとかなりの精度で当たる、3ヶ月先でもトレンドくらいは読める

ドル円でだけではなく、TOPIXなどでもある程度のトレンドは読めることがわかった。日経、ダウ、他の経済指標の予測も可能だと思う
AI予測とVARだと、例えばドル円だと1ヶ月先だと0.9円の差、VARだと1.5円なので、かなり精度が上がる

ウェーブレットを実装しないと、かなり精度が低くなる
ローリングでデータ入力期間を長くすれば、多分、精度は上がる

※★★この論文は、株価の予測の参考になるかもしれない

4. 株価情報を活用した、企業間ネットワークの構築方法について

デフォルトは通常、自社の財務状況で判断。取引先の財務状況を観測し、デフォルト確率を予測できないか
マートンモデル デフォルト計算をする

現在、金融機関で採用されているデフォルト分析には、企業間のネットワークの構築がある。これは、主に, 定期的に企業が公表する決算情報から, 取引関係をつなぎ合わ せることで作られている。これには、決算期のズレ、取引の消滅など諸問題が内在している。

今回は、株価を利用することによって上記で紹介した企業間ネットワークの構築の作業負荷の低減しつつ、動的モデル(前者は静的モデル)の構築を試みた

条件付きデフォルト確率(企業Aが倒産した場合、企業Bはどうなるかをマートンモデルを使って計算)

通常は、Bloombergの決算情報を見て、この企業がこの企業とどういう取引があるかをみてデフォルトを予測するが、データが1年遅れなことと、決算Yがずれていることが問題。

今回は株価の相関の高い企業をネットワーク図にして、デフォルトのリスクの予測が可能ではないかと検証してみた。

例えば、VWは公害規制問題で株価が暴落したが、株価情報を利用したネットワークを利用するとリスク情報が公表される前に、その兆候が見られ、どこまで関係企業のどの辺までが広がるかがわかる

破綻した企業は、ネットワークのクラスターから外れている。リーマンショックの場合は、リーマンブラダーズ、AIGやメリルリンチはクラスターから外れていた

株価がリスクを織り込んでいる下落し、クラスターが外れるのは、おそらくだが、内部情報が漏れ株が売られるからではないかと思う。

感想:最初タイトルでは、全く意味がわからなかったが、株価の急落が関連会社の株価に影響したり、デフォルトを引き起こしたりするという発想自体が面白い。株価をネットワークで考えるという発想は他でも利用できるかもしれない。

5. 債券市場の需給過程に着目した裁定機会検知

仮説 債券市場の歪みは短期で修正されるはずで、それは裁定機会になる。時期を機械的に抽出すれば、リターンをあげられるのではないか。

債券市場の価格は、一般的に景気、為替、金融政策などのファンダメンタルズと投資家の心理状態や需給できまるテクニカルで決まる

短期では特にファンダメンタルズ要因は、実は価格形成にあまり影響を与えていなく、需給の要因に左右される。

短期的には、テクニカル要因が、長期的にはファンダメンタルズ要因が重要となる

需給により発生するノイズに注目した。

説明変数が似たりよったりの動きをするので、多重回帰では説明できない。

債権需給過程モデル化

PCR→PLSはベンチマークをアウトパフォームした。機械学習したものではないので、今後は機械学習を用いて将来を予測するのが課題。

債券価格を駆動する共通のファン ダメンタルズ要因 を主成分回帰 (PCR) や部分最小二乗回帰 (PLS) を用いて抽出。これでは、説明できない部分を需給要因により発生した一時的な乖離と捉えた
これを需給による一時的な乖離の大きさをシグナルとして,そ の修正に賭ける裁定取引を行った。ただし、米国債権のみで有効。

債権のモデルは、米国債にしか通用しない。国内債券は全くワークしない。おそらく、日本債権は日銀や政府の金融政策の影響が色濃くでてしまい、アルゴリズムでの解析には向いていないから。

※債権自体あまり興味がなく、事前の知識もなかったので、よくわからなかった。

6. アナリストレポートからのアナリスト予想根拠情報の抽出

テキストマイニングによるアナリスト予想のレーティング根拠情報を含む文を自動的に抽出する手法の提案

アナリストレポート 1日 1200通 全部熟読するのは不可能だし、ほとんど当たっていない

レーティングの根拠となる情報

共通頻出表現 と 手がかり表現 を定義 → これ結構つかえるかも

マクロ経済に左右される企業だとスコアがでにくい

正直よくわからなかった。

※ ★経済情報のテキストマイニングの処理手順の考え方、フレームワークは参考になった

7. FOMCの評価

テキストマイニングでFOMC議事録の分析

金融政策を策定する委員会の議 事録から雇用や金融市場などのトピックを抽出し,トピックに対してトーンを表す極性値を付与した後,そ のトピック別の極性値を用いて,金融政策の市場への影響を分析

精度を高めるために「係り受け関係」を考慮したトピッ ク別極性付与方法によるトピック別極性値抽出法の提案をする

雇用、インフレ、金融市場を勘案して政策決定
テキストを通してどれだけポジティブなのか、ネガティブなのかを分析
トピック別の極性値を算出

D.Wuの研究が有名

課題として極性が付与されてなく、強さも考慮されていない

テキストの前処理
 Webクローラー
 1993〜2016年の188件
 形態素解析
 品詞フィルターなど

LDAによるトピック抽出

※ちなみに極性とは、叙述を肯定するか否定するかという要素のことをいうらしです。知らんわそんなもの。
※ちなみに、係り受けとは二つの文節が意味の上で結びついているとき
→前の文節が後の文節に「係る」
→あとの文節が前の文節を「受ける」といいます。らしいです。知らん。
感想:★やはり、この論文も経済情報のテキストマイニングの処理手順の考え方、フレームワークは参考になった

8. 普遍的経済価値指標の必要性とその計算可能性

商品などの価格の時系列価格は、実際は価格には通貨自体の評価も混在してしまっている
研究の問題意識は、商品の絶対価値、ブレンウッズ体制以前の金のような価値指標はないのだろうか?というところから出発している。

商品価値の歪みの実例だが、例えば、2013年に日経は円ベースでは年間1.57倍になった。日本では、ダウやDAXと比べると活況だと言われていたが、円ベースでNYダウ、DAXの年間上昇率を比べると実はそれ程変わらないだ

商品の価格 = 商品の交換価値/通貨の交換価値

商品の交換価値を時系列でしっかり追えれば、真の商品の価格が把握できるのではないか?

この研究では、特定の通貨を評価基準にするのではなく、複数の通貨 及び商品 を纏めて基準として用いる方法を提案する。用いる通貨、商品の数が多ければ多い程、歪みは解消する

価格を用いた商品価格は最大20%程度の誤差が生じる

感想: う〜ん、よくわからない。

9. スマートベータ運用がファンダメンタルズ運用に与える影響について Dragon Desk LTD

スマートベータとは、市場の変動を説明するシス テマティックファクターにポートフォリオを連動させる最近流行りのパッシブ運用手法
GPIFも採用し、スマートベータ型のETFの設定も多くなってきた

スマートベータ型がこれだけ増えると他の運用手法を取る投資に影響がでるはず(2016年1月〜3月)
スマートベータ型のはやりである最小分散ETFの純資産残高の残高が増えるとともに日経平均は下がりだした。明確な因果関係は認められないがなんらかの関係がると思われる
例えば、ヘッジファンドの主流であるロングショート運用は同時期からパフォーマンスが悪くなっている

長期バリュー型投資ポートフォリオのリターンが悪化 → スマートベータが影響 → 原因はおそらく、ヘッジファンドがロングしていたファンダメンタルから評価さ れた個別株式のボラタリティが高まり急落したせい

期間が短すぎるので、ロバストファクターモデルを使って検証 → わからん

感想: 課題定期的な発表だったが、スマートベータなり、インデックス投資なりに投資家が集中するようになれば、やはり個々の投資戦略には相当の影響を与えてくるのは確かだろう。AIとは少し外れるかもしれないが、こういう発表も資産運用の観点からは有用だと思う。

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第17回 FINTECH 人工知能学会 金融情報学研究会(SIG-FIN)の感想まとめ

以上、「人工知能学会金融情報学研究会」初デビューでしたが、現在進めているプロジェクトに非常に参考になりました。

金融学会には、参加したことがないのですが、金融に対する工学系の人が考えと経済系の人の考えとは全く違うんだろうなと直感的に思いました。

金融学会は、学会に参加するだけでも会員の紹介が必要で、事前に会員になる手続きをしてからでないと出席できません。おそらく、両学会の交流って殆どないんだろうな?その辺ご存知の方がいらっしゃいましたら、コメントよろしくお願いいたします。

現在、ツテを使って金融学会にも参加できないか模索中です。金融学会も参加できましたら、またレポートいたしますのでお楽しみに!

 

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