【アノマリー】11月株高は本当?日経平均株価の十年間で検証してみた

株式投資の世界には、様々なアノマリー(格言・ことわざ)があります。その中でも特に有名なものの一つに、五月の相場が下げやすいという意味の「セル・イン・メイ(五月は売り)」というアノマリーがあります。

しかし実は、これには対になるもう一つのアノマリーがあります。
それが、11月には相場が上がりやすい、という意味の「11月アノマリー(11月は戻れ)」というものです。

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「11月のアノマリー」「11月には戻れ」とは

セル・イン・メイは、五月の株式相場は下げやすいから売る(Sell)のがよい、という意味合いですが、十一月には逆に、株式相場が上げやすいので、市場に戻ってきて株式を買うのが良い、という意味合いで、「11月には戻れ」と言うのです。

つまり、11月から株価の上昇トレンドが起きやすいことを示すアノマリーです。そのまま「11月のアノマリー」とも呼ばれています。

欧米ではよく話題にのぼるアノマリーながら、日本では意外とあまり知られていないようです。しかし、日本でもよく話題になる有名な他のアノマリーと関連付けて考えると、非常に納得がいくものです。

11月はなぜ株高トレンドになるのか、その理由

株価は全体で見ると常にランダムに動いていると言われます。少々おおざっぱに言うと、あしたの株価が上がるも下がるも、確率は概ね五分五分だ、ということです。

だから、「セルインメイ」で五月に下がったら、その反動として、いつかまた上げる月が来るのです。それが11月です。

5月から11月が来るまでを、アノマリーを参考にしながら概括すると、次のようになります。

セルインメイの5月から10月までは下げトレンドが多い

まず「セルインメイ」の5月は海外の決算月でもあり、株価が大きく下げやすい月です。そして、それからほどなく、アノマリーで言うところでは「夏枯れ相場」に移行していきます。

なつがれの8月株安から9月の「彼岸底」にかけて株安が続き、さらには「10月株安」のアノマリーがやってきます。

このように、5月から10月は、アノマリーの世界ではおおよそが「下げ相場」なのです。そのため、英語圏では「五月に売って、そのまま(市場に)帰ってくるな」( = “Sell in May and Go Away”)というアノマリーもあります。

11月から4月にかけて上げトレンドがやってくる

この、初夏から秋にかけての枯れ相場から、ついに上げトレンドに移るタイミングがやってきます。それが、11月です。

正確には、10月31日(月末)に節目がやってきて、それから11月に株価を上げるというのです。
この10月31日というトレンドの節目に注目した場合には、11月アノマリーではなく「ハロウィン効果( = “Halloween indicator”)と説明されることもあります。

11月アノマリー、あるいはハロウィン効果の背景には、この時期に企業決算が重なり、投資家心理に買い傾向が強く出る、ということがあります。夏の間の軟調な相場を経て、11月に一気に潮目が変わる、というわけです。

そうすると、5月から10月にかけて上値の重い株価は、10月末の「ハロウィン効果」を境目に上昇基調を示し出し、11月には「11月のアノマリー」で上昇トレンドに乗りやすくなるのです。

過去十年の日経平均株価で検証してみる

こうして、他の有名なアノマリーとからめて考えると、上昇トレンドの節目を示す11月のアノマリーはさもありなんというところですが、実際のところはどうなのでしょうか?

とくに、アノマリーは株式投資の歴史のなかでも比較的昔から語られるものが多く、電子商取引やロボトレーディングが導入された2000年代後半以降にもアノマリーがそのまま通用するかどうかは、確かめてみないとわからない部分があります。

そこで今回は、日経平均株価の「2007年以降」の10年間の日足データをもとに、5月頃と11月頃で毎年どのような値動きが起きていたかを、統計調査してみました。

次の図が、その結果です。

この十年の「11月アノマリー」実現率は60~75%

上の図は、5月と続く6月の株価平均(A)、および11月と続く12月の株価平均(B)を、年ごとに10年間にわたって比較したものです。

単純にAとBを比較すると、Bつまり11月に株価が上げている年は、全10年のうち6つで、「11月のアノマリー」実現率は6割となります。

しかし、この統計のうち、2007年と2008年は、歴史的な経済危機が起きていた期間です。サブプライム・ローン危機、およびリーマンショックです。

こうした世界規模の経済危機は、これまで十数年に一度の頻度で発生してきました。こうした経済危機が起きている期間では、大幅な、かつ長期にわたる株価の大暴落が起き、アノマリーなどの一般的な傾向がまるで通用しなくなることがほとんどです。

そこで、この経済危機にあたる2年間を控除して、あらためて「11月株高」率を出すと、今度は7.5割となります。(上図赤枠部分参照)

11月アノマリー確度高く/2017年予想は

つまり、「よほどの歴史的経済危機に襲われでもしない限り」、11月アノマリーが実現する確率は7.5割(75%)といえます。基本的に常にランダムに動くと考えられる株式相場において、75%という確率は相当強く傾向が出ていると言えるでしょう。

今年の日経平均株価について予想するならば、今年(2017年)は昨年2016年より株高で推移しています。

ただ、サブプライム・ローン経済危機以降目立った景気後退は見られておらず、そろそろ株価調整(=リセッション/景気後退/暴落)が起こっても不思議はない、という声も市場で少しずつ聞かれるようになってはいますが、今回の調査による「11月アノマリー」の確率を見るに、11月にふたたび上昇トレンドが現れる確率は高いと考えられるでしょう。

 

2 件のコメント

  • “Anomaly”とは、通常のパターンから外れた変則的な事象のことです。これを「格言・ことわざ」と訳すのは間違いです。

    • アノマリーは、私の理解では、株式市場で、根拠はないがそうなる確率が高い経験則という意味で使っております。
      それが多くの人に認識されてくると格言やことわざのようなものになってきているのではないかという意味で、アノマリーを格言、ことわざと置き換えて使っています。
      正確には、違うのかもしれませんがイメージ的には、あってるのではないかと思っております。
      Wikipediaのアノマリーの説明でも経済学のところに「経験値から得られた格言」という項目で「節分天井、彼岸底」などが説明されております。
      https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%8E%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%83%BC

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