米国株予想:インフレ減速期待で株買い急拡大 底入れ兆候の指摘も

前取引日のNYダウは+765ドルの2万9490ドルとなり3営業日ぶりに大幅反発。米国の製造業景況感が予想よりも悪化しているとの認識が広がり、FRB(米中銀)が金融引き締めをペースダウンさせるとの見通しで株買い安心感が台頭。ハイテクなど高PER銘柄を含む幅広い銘柄が買われる展開となった。

個別銘柄では、インテルやシェブロンなどが買われたほか、キャタピラー、ボーイング、アメリカン・エキスプレスなどが上昇した。当社配信の米国株有料レポートでは、素材のコンソル・エナジーなどが上昇。コンソル・エナジーは掲載後3ヶ月で37.7%の上昇となった。

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昨夜米時間に発表された米9月ISM製造業景況感指数は50.9と前月比ー1.9ポイントの低下、さらに本指数のなかの個別指数となる新規受注指数は47.1と、数字の強弱の節目となる50を下回り、2020年5月以来の低水準を記録した。

米製造業景況感の悪化を示すこうした数字は、通常であれば米景気悪化見通しの台頭による株売りをうながすはずが、昨日の相場では幅広い銘柄への買い要因となって米株式市場を支えた。背景には、これまでの米景気の強さを根拠にFRB(米中銀)が推し進めてきたハイペースな景気引き締め政策への警戒感がある。

コロナ禍以後の金融緩和を経た米国で急ピッチで進んでいた物価上昇(インフレ)を鎮めるため、FRBは歴史的なペースでの金融緩和巻き戻し(利上げ、金融環境の引き締め)を積極的に行っている。「今後景気が下ぶれても、金融引き締めは止めない」というのが、FRB要人から繰り返し出されてきたメッセージである。インフレ高進が米経済にもたらす甚大かつ持続的なダメージに比べれば、金融引き締めによってもたらされる景気悪化は相対的には小さく、また短期的なものにすぎない、ということだ。

このようにFRBが中長期的・マクロ的見地から金融政策の方向性を定めている一方、投資家らは景気悪化による株価下落を嫌気する。そのため、あくまで前向きな理由に根ざしたFRBの積極的金融引き締めが続く限りにおいて、株式市場では弱気相場が続くことになる。

しかし昨日のISM製造業が予想を下回る悪化ぶりを示したことで、もうFRBは金融引き締めをこれ以上ペースアップさせる必要がなくなるのではないか、という見立てが広がったのだ。物価上昇は強い経済状況がもたらすものであり、経済活動の勢いが
弱まればインフレの勢いも減速あるいは後退する。そうすればFRBはもう金融引き締めを行わなくてもよくなる。

もちろん、この上げ局面をまだまだ続く弱気相場の調整、いわゆるダマシにすぎない、と主張する市場参加者も多い。まだ下げるだろうし、まだ下げてほしい(=安値で買い仕込みたい)という願望がまぜこぜになった主張かもしれないが、それでも彼らの主張はまだまだ正当性がある。昨日のISM製造業以外にも米経済指標が軒並み下げている、というな状況にはまだ、至っていないためだ。

その一方で、昨日の大幅反発を弱気相場の底打ち兆候だと主張する投資家らは、米長期金利の動向をその根拠として引用する。高止まりしていた米長期金利が先日急低下したことが、市場における安全資産への逃避(安全資産である米長期国債買い=米長期金利上昇)の流れが転換したことを示している、というのが彼らの主張だ。

このようにまだまだ相場見通しにばらつきが見られるなか、市場関係者の多くは今週末7日NY時間に控える米9月雇用統計に高い関心を注ぐ。これまでのような強い雇用市場はいわゆる「クセになりやすい」インフレ要因だが、そのぶん、次の雇用統計が弱い数字となれば、FRBが大方針を転換する根拠にもなりやすい。

今のところはまちまちの内容になりそうだというのが次の雇用統計についての市場予想だが、おそらく市場コンセンサス値をいくらか下振れるだけでも、株式市場は待ってましたとばかりに買いで反応する可能性が高い。こうした展開が続けば、いよいよ米株式市場は底入れから回復への道のりに転換する可能性が高まってくる。

今後買われる銘柄としては、決算の健全な業績期待銘柄に物色が集まってくるだろう。こうした銘柄は相場底入れから回復期にかけて大きな株価差益を生む可能性が高い。また景気敏感株に関しては、今後の底打ちを探っていく展開となりそう。

 

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