日本時間12日午前0時ころ、NYダウが瞬時に急落しすぐに買い戻される、いわゆる「フラッシュ・クラッシュ」が発生しました。
このきっかけは、米トランプ大統領の長男が、ロシアとの不適切な関係を示唆しかねない文書を公開したことと言われています。
彼が公開した文書はトランプ政権をゆるがすものにもなりかねないものだとして多数の報道が行われましたが、それにAI(人工知能)が反応し、瞬間的に大量の売り注文を出したことで100ポイントもの値下がりが発生したと考えられます。その後、きわめて流動的な市場のなか、すぐに買い戻しが起き、価格が戻りました。
目次
フラッシュ・クラッシュとAI/HFT
フラッシュ・クラッシュとは、株価などの相場が、一瞬で急落することを言います。
この言葉が広く知られるようになったのは、2010年にNYダウ工業株30種平均(ダウ平均)に起こった急落がきっかけです。
2010年のフラッシュ・クラッシュ
2010年5月6日、ダウ平均がわずか数分の間に約1000ドル(-9%)も下落しました。この急落は取引中の記録としては最大の急落であり、瞬く間(=フラッシュ)の暴落(=クラッシュ)であることから、フラッシュ・クラッシュと呼ばれるに至りました。
2010年に起きたこのフラッシュ・クラッシュは、元々は、指数先物取引で運用会社が大口の売り注文を出したことがきっかけだったと言われています。
この大口売り注文によって先物価格は急落、それにAI(人工知能)が反応し、追随して高速で売り取引が出ました。こうして、一瞬で売り・価格下落のスパイラルが発生したことが、2010年のフラッシュ・クラッシュの原因と考えられています。
フラッシュ・クラッシュと高速取引の関係
2010年フラッシュ・クラッシュが起きた当時は、AIを活用して超高速に売買を行う、いわゆるHFT (High Frequency Trading = 高頻度取引)が普及していました。HFTで行われる売買取引の頻度は、一秒間に数千回とも言われます。
また当時は、ニューヨーク証券取引所やナスダックの上場株の分散取引が急速に進んでいた時期です。
分散取引とは、最大五十箇所以上の取引所で処理を分散することにより、大量の取引をさばくことを言います。
このような要因から、極めて短い時間で非常に大量の取引が行われたこと、また一つの傾向が引き金になって大きなスパイラルを引き起こしたことが、2010年フラッシュ・クラッシュの最大の原因と考えられています。
フラッシュ・クラッシュが起きるのは株式市場だけ?
日本時間12日深夜のフラッシュ・クラッシュは、トランプ大統領周辺の報道がトリガーになったものと考えられます。
とはいえ、昨今の市場の大きな傾向としては、いわゆるトランプ相場への注目は一服していたところで、イエレンFRB議長の発言により耳目が集まっていると言えるでしょう。
FRB議長発言が次のフラッシュ・クラッシュをもたらす?
歴史的に、FRB議長の発言は、株式よりもむしろ金融市場・為替市場に大きな影響を与えてきました。代表的なものが、2013年の当時に第14代FRB議場を務めていたバーナンキの発言による金融市場の混乱、通称「バーナンキ・ショック」です。
バーナンキ・ショックの際は、FRB議長(バーナンキ氏)が量的緩和の縮小・引き締めの可能性を示唆する発言を続けて行ったことにより、投資家がいっせいに慎重姿勢に入り、大量売りでの株価暴落などが引き起こされました。
つまり、イエレンFRB議長の今後の発言次第で、為替相場も大きく動揺しえるということです。
イエレン議長は、日本時間本日12日の21:30頃に下院金融委員会で、また13日には上院銀行委員会で証言を行う予定です。これにより米インフレや物価の上下見通しが語られると目されています。これで新たなフラッシュ・クラッシュが起きないとも限りません。
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