2024年2月、日経平均は34年ぶりに史上最高値を更新、3月には初の4万円台を記録した。
しかし2024年8月5日の日経平均はブラックマンデーの暴落幅を超え、歴史的な大暴落となった。暴落が発生すると、耳にすることが多くなる「追証(おいしょう)」。
本記事では、追加の支払いが「追証」が発生する条件と防ぐ方法、新NISAでは発生する可能性があるかについて解説します。
追証とは
追証とは、追加保証金の略称で信用取引*1の制度です。
信用取引は少ない資金で効率的に収益を上げること(レバレッジ)が期待できる一方、損失が発生した場合には大きなリスクとなります。
信用取引の際に委託保証金率(維持率)が下回ると、担保不足となり追証が発生します。委託保証金率は証券会社により異なりますが、20〜30%で設定されています。
信用取引では保有資金を超える金額のお金を借りて株式を購入(空買い)や持っていない株式を借りて売却(空売り)することができます。通常の取引は現物取引(げんぶつとりひき)と言います。
追証が発生する条件
上記の図では「元手」と表記していますが、投資家が信用取引を行う際に証券会社に預け入れる保証金を「委託保証金」と言います。
委託保証金率が、最低委託保証金率20%(*1)を下回った場合、追証が発生します。
委託保証金 | 保証金(100万) – 建玉含み損(60万) = 40万 |
---|---|
委託保証金率 | 現在の委託保証金(40万) ÷ 建玉金額(300万) = 13.3% |
必要保証金 | 建玉金額(300万) × 最低委託保証金率(20%) = 60万 |
追加保証金(追証金額) | 必要保証金(60万) – 現在の委託保証金(40万) = 20万 |
期日までに最低委託保証金率が20%以上に回復するように、委託保証金(担保)を入金するか建玉を減らす必要があります。期日が過ぎても解消されていない場合、強制決済されるため注意しましょう。
本記事内では20%としていますが、最低委託保証金率は証券会社により定められています。また、米国株式と国内株式によっても異なります。
追証を防ぐにはどうすればよいか
追証は、「担保にしている株が値下がり」したときや、「買い(売り)建玉に含み損が発生」した場合に発生する可能性があります。
しかし、最低委託保証金率を下回らなければ追証は発生しません。以下は一例ではありますが、追証を回避するには次のような方法があります。
- レバレッジを高くしすぎない
- 保証金のうち一定金額を現金で確保しておく
- 分散投資をする
- ロスカットのルールを定める(逆指値を活用する)
新NISAでは追証は発生する?
結論から言うと、NISAで追証は発生しません。
信用取引はNISA制度の対象外のため、NISA口座では信用取引ができません。
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過去の暴落の歴史
東京証券取引所が毎週公開している、信用取引現在高によると8月9日時点の信用取引の買い残(東証・名証2市場合計)は、前週比9086億円減の3兆9635億円となっている。
株価の暴落により、信用取引で買い建てている銘柄の含み損が大きくなり追証が発生したことが背景と言えるでしょう。直近10年以内では最大の減少幅。
暴落と密接な関係にある、追証ですが株価の暴落はいつ発生するかわかりません。2024年8月時点で日経平均が大きく下落(下落率)したのは以下の通りです。
順位 | 年月日 | 日経平均終値 | 下落率 | 原因 |
1 | 1987/10/20 | 21910.08 | -14.90% | ブラックマンデー |
2 | NEW 2024/8/5 | 31,458.42 | -12.40% | 日銀0.25%利上げ |
3 | 2008/10/16 | 8458.45 | -11.41% | リーマンショック |
4 | 2011/3/15 | 8605.15 | -10.55% | 東日本大震災 |
5 | 1953/3/5 | 340.41 | -10.00% | スターリン暴落 |
6 | 2008/10/10 | 8276.43 | -9.62% | リーマンショック |
7 | 2008/10/24 | 7649.08 | -9.60% | リーマンショック |
8 | 2008/10/8 | 9203.32 | -9.38% | リーマンショック |
9 | 1970/4/30 | 2114.32 | -8.69% | スイスIOSショック |
10 | 2016/6/24 | 14952.02 | -7.92% | 英国EU離脱 |
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まとめ
本記事では、追加の支払いが「追証」が発生する条件と防ぐ方法、新NISAでは発生する可能性があるかについて解説しました。
信用取引は大きく収益を上げるには魅力的な仕組みではありますが、レバレッジの効果は損失時にもあらわれるためリスクを想定しておく必要があります。うまくリスクコントロールをしながら計画的な投資をしましょう。