近年の為替市場では話題となることがあまりなかったユーロドルですが、2020年は比較的話題に取り上げられることの多い通貨ペアとなっています。
コロナショックは金融市場に多くの影響を与えましたが、コロナショック後のユーロドルの歩みを振り返るとともに、今後のユーロドルの値動きのポイントを解説いたします。
このページの目次
①EU加盟国は7月にコロナ復興債の設立に合意、ユーロ圏経済の早期の立ち直りが期待されユーロが買われる
コロナショックはEU加盟国にも経済的に大きな打撃を与えましたが、EU加盟国はコロナショックからの復興のためEU共同債、通称コロナ復興債の設立を7月に合意しました。重要事項は原則全加盟国の賛成が必要とされるEUは、これまでスピーディーな決定を苦手としていました。しかしコロナショックからの復興への取り組みは、世界の先陣を切る形となりました。(米国は9月後半に入っても追加経済対策の実現が見えません)
EUのコロナショックからの復興にかける姿勢は市場から評価され、ユーロが買われることに。その結果、2020年2月以降1.4000~1.5000ドルでフタをされていたユーロドルは、7月に同水準を上抜けして、本格的な上昇を始めることになりました。
②ECBがユーロ高を懸念する中で1.2000ドルに到達
コロナ復興債の設立決定を契機にユーロが買われる流れとなり、ユーロドルは7月から上昇トレンド入りしています。上昇トレンドは7月一杯で概ね収まりましたが、8月も高値更新が続くジリ高が継続しました。
しかし過度なユーロ高はEU加盟国最大の経済力を持つドイツの経済に対してマイナスに働くため、8月に入りECBからは行き過ぎたユーロ高に対する懸念の声が上がり始めます。
メディアなどを通じユーロ高に対する懸念が伝えられる中で9月1日には節目価格であり、7月の上昇時から意識されていた1.2000ドルに一時的に到達します。しかし1.2000ドル到達がユーロドル上昇のゴールになる形となりました。
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③新型コロナウイルス感染第二波を受けた下落
ロックダウンの導入などで春以降の新型コロナウイルス感染者数の拡大を抑えた欧州各国ですが、9月に入ると再び感染者数の拡大が進み、外出制限の再導入の検討などが進んでいます。
またコロナ復興債の設立を契機に上昇が進んだユーロドルは、ユーロ高を懸念するECB関係者の口先介入に加え新型コロナウイルス感染拡大第二波もあり、9月は下落が進み9月23日には8月の安値も更新しました。
ユーロドルは9月1日の1.2000ドル到達後、高値及び安値を切り下がる展開となりました。新型コロナウイルス感染第二波というファンダメンタル要因もあるため、今後更に下落が進む可能性があります。
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ユーロの今後、目前にブレグジット問題が迫りつつある
新型コロナウイルス感染第二波を受けて下落が進むユーロドルですが、ユーロを動かすテーマとしてブレグジット(イギリスのEU離脱)問題が目前に迫っています。
現在進んでいる通商協議は、10月15日のEUサミットまでが合意期限となっていますが、EUとイギリス間の交渉は難航中です。よって、合意無き離脱=ハードブレグジット、となる可能性もあります。ただし一方で、最終的に英ボリス首相が昨年同様に期限直前に決断して、ハードブレグジットは回避される可能性も残されています。
そして今後のユーロドルのポイントとなる価格帯は、やはり1.2000ドルがあげられます。節目価格として分かりやすく9月1日に一度タッチした際は、すぐに反落しています。今後上昇して再度1.2000ドルで反落するか、それとも次回こそ1.2000ドルを上方ブレイクできるのか、という点はユーロドルの大きな注目ポイントです。
一方で更に下落が進んだ場合は、1.1500ドルがポイントとなります。高値1.2000ドルから反転しやすいと言われる3割戻しの値位置に概ね該当し、また2月の高値とも重なりサポート&レジスタンスとして機能しやすい値位置にあります。
イギリスのEU離脱のもう一方の当事者であるEUが採用する通貨ユーロは、10月の離脱交渉のタイムリミットを控え今後値動きが激しくなる可能性があります。ユーロドルの取引を行う際はチャート上に現れる値動きのみならず、イギリスのEU離脱に向けた交渉やスケジュールの状況も注意する必要があります。ご注意ください。
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