夏期、とくに8月は、値動きが小さくなり、また株価が下げ基調となる傾向がある、という「夏枯れ相場」と呼ばれるジンクス(予兆、アノマリーともいう)が、投資・相場の世界には存在しています。
8月までもあと半月というところですが、夏枯れ相場のアノマリーは実現するでしょうか?本年の状況を省みつつ、今後の日本株について考えます。
目次
取引激減&下げ?「夏枯れ相場」アノマリー
夏期の8月には、株式市場の取引高が減少し、相場が動かなくなり、株価が下げ基調となる、というジンクスがあります。このジンクスを俗に「夏枯れ相場」と呼びます。
こうしたジンクスは、決定的な根拠がないとはいえ、経験的にはそんな傾向が確かに感じられる、という意味合いで「アノマリー」とも呼ばれます。
アノマリーは「夏枯れ相場」の他にもアンラッキー7のアノマリーや「セル・イン・メイ(5月は売り=下がりやすい)」のアノマリーなどがあります。
「取引減」は本当
この夏枯れ相場のアノマリーは、あながち根拠のないものではありません。
というのも、市場の取引高が減少する、というのは、ほぼほんとうだからです。
なぜなら8月は、日本ならお盆休み、海外でも夏季休暇(サマーバケーション)の時期であり、そもそも市場に参加する人数の総量が少なくなるからです。
例えば、この期間の通勤電車やランチタイムのレストランなどは、いわずもがな、客足が激減しますね。それと同様に、平時において株取引を行っている人たちは、8月の休暇時期にはふだんと異なる行動を取っているのです。
「下げ基調」は本当か?
さて、みんなが休暇に入って取引量が減り、相場が動きにくくなる、のはわかるとしても、株価が下げ基調となる、というのはほんとうでしょうか?
「ポジション調整で売り」と集団真理が要因?
理屈としては、夏枯れ相場で軟調傾向を示すのは、投資家がポジション調整で売り傾向を示すから、ということになっています。
また、夏枯れ相場のアノマリーは世に広く知られるアノマリーであるため、この時期には新聞各紙でも「夏枯れ相場か?」と紙面に顔を出してきます。
そうなると、投資家たちもその傾向を意識し出し、なおさら買いが減り、売りが増えることにもなる、と考えられます。
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2014-16年の実際のデータを見てみよう
そこで、本当に下げ傾向なのか、直近三年(2014 – 16年)の実績を見てみました。サンプルにしたのは日経平均株価、また参考までにTOPIXも取ってみました
日経平均株価は、概ね「夏枯れ」る
まずは日経平均をを見てみましょう。
グラフは、7, 8, 9月の日別推移を、この3年間で比較したものです。
グラフの8月部分(赤枠)を見ると、2015年(赤)の下落が群を抜いて目立っていますね。一方2014年(青)と2016年(緑)は、目立って下落とは言えないにせよ、動きがゆるくなっています。
比べて、前後の7月および9月は、三年間のどれかの線であきらかに上がっているものが見つかります。7月なら2016年(緑)、9月なら2014年(青)といった具合です。
つまり、日経平均株価は、8月に入ると「動きが鈍くなるか、または下がる傾向が強まる」と言えます。となると、「夏枯れ相場」のアノマリーは「アタリ」です。
TOPIXも、おおむね「同様の夏枯れ」
もう一つ、TOPIXのグラフも見てみましょう。
日経平均もTOPIXも国内の代表的な指標として「似たようなもの」ではありますが、参考までに見てみます。
こちらも、日経平均に比べ勾配が緩やかではあるものの、概ね日経平均と同じ傾向が見られます。
7月・9月は上昇年があるものの、8月は横ばい年か下落年しかない、という意味で、やはり夏枯れ相場のイメージそのままと言えます。
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2017年はどうなる?/要因と見通し
では、今年2017年の8月も、夏枯れ相場のイメージ通りに推移するのでしょうか?
夏枯れ相場を襲いかねないいくつかのリスク
2017年として考えれば、いまのところの大きなトピックとしては、地政学的リスク、FRB証言、米およびトランプ大統領関連のほか、ヨーロッパでも総選挙など様々な話題がありました。
一部のトピックは今後影響が大きく出る可能性は低くなっていますが、それでも突然に株価に大きな影響を与えかねないトピックも残っています。
そうしたトピックに、もし近々動きがあれば、取引数の少ない8月を直撃し、大きな株価の下げを示す可能性も高くなると言えます。
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警戒すべきは夏枯れ相場の「その向こう」?/暴落のサインも…
2017年の日経平均は20000超えの高値が続き、経済誌によっては24000円台も考えられるとの見通しがあります。
一方で、過去の日経平均暴落からすでに8年9ヶ月が経過しており、平均的な暴落周期にどんどんと近づいているところです。
となると、警戒すべきは、夏枯れ相場の軟調、というよりも、夏枯れ相場を突然襲う市場の動揺、もしくは株価暴落の兆しかもしれません。
アノマリーを「たかがジンクス」とあしらうのも一つではありますが、「夏枯れ相場」の周辺では、何かしらの変化の兆しが訪れていないか、いくらかは気を張っておくのがよいかもしれません。
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