先週末にG20財務相・中央銀行総裁会議が開かれました。
その後、週が明けて、円高基調が続いています。G20で円高になった理由を考察します。
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G20財務相・中央銀行総裁会議のポイント
G20財務相・中央銀行総裁会議は、アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、欧州連合、ロシア、中華人民共和国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、オーストラリア、韓国、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチンの20か国、地域の財務相・中央銀行総裁が集まって、世界の経済や金融、為替のことを話し合う会議です。
今回のG20財務相・中央銀行総裁会議は、ポイントは、トランプ政権発足後、初のG20ですので、アメリカのムニューチン財務長官が初めて参加して、トランプ大統領のアメリカファーストの考えが、どこまでG20で発言するかが焦点となっていました。
G20開幕前のポイントとしては、
1、アメリカの保護主義が貿易不均衡についてどこまで踏み込んだ発言をするか
2、アメリカが為替に関して、どこまで言及するか
3、上記のことが声明文にどこまで盛り込まれるか
の3つでした。
それぞれ、実際にどうなったのかを見ていきましょう。
1、アメリカの保護主義が貿易不均衡についてどこまで踏み込んだ発言をするか
今回のG20では、アメリカの貿易不均衡について、中国、ドイツ、日本には、直接的な言及はありませんでした。
ただし、議論では、保護主義に対して、アメリカが、公平な貿易を望み保護主義の文言を削除することを要求したのに対して、中国が、保護主義への断固反対を掲げ、議論が紛糾しました。
最終的には、アメリカに押し切られる形で保護主義の文言を生命から削除されました。
2、アメリカが為替に関して、どこまで言及するか
為替に関しても個別な国への言及はありませんでした。従来通りの通貨安競争の回避を確認することと為替レートの過度な変動や無秩序の動きは経済・金融の安定に悪影響を与えうるということを確認しました。
アメリカが一方的に日本や中国を為替に関して非難するということは、ありませんでしたが、ムニューチン財務長官は、「長期的にドルが強いことアメリカに良いことだが、短期的には悪い面もある」という従来の主張を繰り返しました。
3、上記のことが声明文にどこまで盛り込まれるか
今回のG20の声明文には、1の保護主義に関して、従来の反保護主義の記述は見送られました。
これにより、アメリカの保護主義が強く出た形になります。
為替は従来通り「通貨の競争的な切り下げを回避することや競争力のために為替レートを目標とはしないこと」を確認するとしています。
上記の件ではありませんが、難民支援や地球温暖化防止に関しての記述も見送られました。
G20財務相・中央銀行総裁会議で円高になった理由
G20財務相・中央銀行総裁会議で円高になった理由は、ずばり「アメリカの保護主義への警戒」による経済へのマイナスの影響を恐れたからです。
共同声明で反保護主義の文言が削除されたことで、トランプ政権の保護主義の高まりが懸念されて、円買いドル売りになりました。
さらに為替の声明で「通貨の競争的な切り下げを回避することや競争力のために為替レートを目標とはしないこと」となったことで、アメリカはすでに利上げしていて、EUも緩和縮小に動いている中で、日本の日銀だけ超緩和策を進めていることは、為替操作ととられかねず、今後の金融政策のかじ取りが難しくなり、結果的に円安に誘導しづらくなったことも円高になった要因の一つです。
本日は、111.5円前後で推移していますが、G20だけではなく、3月17日のミシガン大米消費者態度指数n速報値でインフレ予想が大幅に低下し、アメリカの早期利上げが後退したことや昨日のニューヨーク市場でトランプ政権へのオバマケア代案への不信感などが高まりを見せ、NYダウが大幅に下落して、米長期金利が同時下落したことで円高になっています。
現在の円高は、
1、G20のアメリカの保護主義への警戒の高まり
2、アメリカのインフレ期待後退による早期利上げの後退
3、トランプ大統領の政策への不信感の高まり
といった理由から、円高になっています。
今後は、フランス大統領選選挙による政治不信の高まりなど、リスク要因がありますので、しばらく円高基調で進みそうです。
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