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【17年下半期】「8月円高」アノマリー/直近の発生率とその理由

為替レートは様々な要因に応じて変動します。その動きはランダムと言ってもよいほどです。
しかし、その一方では、ある種の法則性「のようなもの」が見られるのも事実です。

こうした法則性「のようなもの」は、明確な根拠が示されているわけでもなければ、必ずそうなるわけでもありません。
しかし、歴史を振り返ると、どうも「そうなることが多い」という、その法則性のようなものを、アノマリーと呼びます。

アノマリーの中には、8月の為替相場が高い確率で円高に触れる、という、いわゆる「8月円高」のアノマリーというのものがあります。それがどの程度信用できるものなのか、これまでは実際どうだったのか、本記事で確認します。

「8月円高」アノマリーとは

株式投資の世界でいう「八月相場は枯れ相場」「アンラッキーセブン」といったアノマリーはよく知られていますが、為替相場にもアノマリーは存在します。そのひとつが、「8月円高」のアノマリーです。

毎年8月は、月初めよりも月終わりのほうが、為替が円高に触れる、というアノマリーのことです。

この10年間のデータを確認する(2007~16年)

まずは、このアノマリーがどの程度信用できるものか、この10年間(2007~16年)のデータを見てみましょう。

(計測年:月初終値 → 月末終値)
2016年:102.38 → 103.42 【円高】
2015年:124.01 → 121.22 【円安】
2014年:102.61 → 104.05 【円高】
2013年:99.53 → 98.15 【円安】
2012年:78.43 → 78.37 【円安】
2011年:77.24 → 76.59 【円安】
2010年:86.48 → 84.16 【円安】
2009年:95.25 → 93.01 【円安】
2008年:107.66 → 108.75 【円高】
2007年:118.84 → 115.75 【円安】

円高率:3割

このように、直近10年のデータだと、8月円高のアノマリーは当てはまってはいないようです。
このアノマリーはでっちあげなのでしょうか?

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確かな根拠がある「8月円高」アノマリー

「8月円高」アノマリーは、けして根拠のないものではないのです。

今回調べた直近十年間だと、このような的中率になってはいますが、データを拾う期間をずらしていくと、「8月円高」アノマリーを確かに信用できそうなデータが出てきます。例えば2000~09年の10年間にずらすと、八月の円高率は8割になります。

そして、実データの他にも、8月が円高に触れやすい条件が整っているという事実も、このアノマリーの根拠になっています。

8月中旬の米国債利払いが端緒?

例年8月中旬には、米国債の利払いが行われます。
そのため、その利子を円に両替しようとして、大量のドル売り(円買い)が発生します。これが「8月円高」が発生する端緒になるのです。

といっても、この利子両替のためのドル売り円買いが直接円高を引き起こすかというと、そういうわけではありません。
というのも、米国債の利払いは、為替相場に大きな影響を与える規模とは言えないからです。

月間の売買高に比べると、このときの取引額は0.1%にも満たないといいます。これだけでは、大した円高圧力とは言えません。

8月円高を「実現させる」のは、短期売買トレーダー

本当の「8月円高」の理由は、この米国債利子の両替が発生するトレンドに乗った、ほかの短期売買トレーダーの取引が、大量に発生するためだと言われています。

円高を実現させているのは、米国債利払いの利子を円に両替したい人「そのもの」ではなく、それを材料に、時流に乗ってドル売り・円買いに加担する、数多くの短期売買トレーダーである、というのが、本当のところのようです。

「これから円が買われる」
→「円高の機運が生じるであろう」
→「順張り(潮流に合わせて自分も売るor買う)で自分も買っておこう」
→連鎖的に円買いがふくらむ
→ほんとうに円高へ

という流れと推測されています。

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直近10年の円安の謎、2017年の見通し

この直近10年の8月為替がかならずしも円高に触れていないのは、この間に起きた大きな調整(為替の異常な変動)のためと考えてもよいでしょう。

単純に考えても、2008-09年のリーマン・ショックや、2011年の東日本大震災など、通常とは異なる要因が「8月円高」実現を妨げた可能性は、否定できるものではありません。

09年から13年までの5年間は円安で推移しましたが、その後、14年から16年の3年間では、うち2度が円高に振れています。
だんだんと8月円高傾向に戻ってきたと判断するなら、2017年8月が円高で終わる確率は高いと言えるでしょう。

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