統計的な根拠が示されていないにもかかわらず、多くの投資家の経験から「起こりやすい」とされる投資の経験則、あるいはことわざのようなものを、アノマリーといいます。
アノマリーには月や季節に関わるものから選挙など政治イベントに関わるものまで様々ですが、中には、日本でのアニメ作品の放映が相場に影響をおよぼす、とするアノマリーもあります。それが「サザエさん効果」および「ジブリ効果」です。
サザエさん効果(サザエさんの法則)
一つ目の「サザエさん効果」は、日曜日に放映される長寿アニメ番組「サザエさん」の視聴率で、株式相場の動きを予測することができる、というものです。
具体的には、サザエさんの視聴率が上がると株価が下がり、サザエさんの視聴率が下がると株価が上がる、というのが、サザエさん効果の中身といいます。なんとこの効果は大和総研が2005年に発表した調査レポートによって広く知られるところとなったものです。
なぜそんなことが起きるのかというと、サザエさんの視聴率が高い時期は、みんなが家にいる時期であり、外でお金を使わず過ごしているから、景気が冷えている(=相場が軟調になる)ことを示している、という説があります。反対に、景気がよければみんながお金を持っているから、日曜日の夜はみんな外に出てお金を使っており、それに応じてサザエさんの視聴率は下がるはずだ、というのです。
この説明はあくまで後付で示されたものであり、根拠として正しいのかどうかは異論があります。しかし、大和総研の調査は公に出されたもので、そこでは株価(TOPIX)とサザエさん視聴率との関係がしっかりと相関係数で明示されています。根拠がはっきりしないにせよ経験的に支持されている、という点では、まさにアノマリーと呼ぶにふさわしいものと言えます。
ジブリ効果(ジブリの法則)
もう一つよく知られているアニメ関連のアノマリーが、「ジブリ効果」です。
スタジオジブリ作品が金曜に放映されると、明けた月曜の市場が大荒れになる、というもので、このアノマリー通りに市場が動けば、ドル円は円高ドル安に動き、株価は乱高下する、といいます。
ジブリ効果を初めて耳にした人のほとんどは、これをアノマリーというよりも「迷信」とたかをくくりがちですが、米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルが、このアノマリーの統計調査を行い、もうひとつ踏み込んだ説明を加えています。
その説明とは「第一金曜日のジブリ映画放映中に米雇用統計が発表されると、円高ドル安・株価乱高下が起きやすい」というものです。
米雇用統計はとくにドル円あるいは為替に大きく影響を与える指標であり、毎月、米時間の第一金曜日の朝に発表されるものです。これは、日本時間だと夜10時ころにあたり、金曜夜にテレビで映画が放映される時間帯とちょうどぶつかっています。
ウォール・ストリート・ジャーナルの記事では、「2010年から13年(記事公開時)まで、米雇用統計発表と重なるジブリ放映は10回あったが、うち9回でジブリ効果が実現した」と言い、じっさい、テレビ放映中にドル売り円買いを行い、その後ジブリ効果のとおり円高ドル安に動いたら、円売りドル買いを行うことで、結局25万円ぶんの差益を手に入れた、という「ナカムラユキオ」氏のエピソードなどを紹介しています。
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根拠がなくても相関があるアノマリーを甘く見ないこと
このように、直接的な根拠は示されていませんが、経験的には、これらのアノマリーは実現する傾向が高いと言えます。
根拠がはっきりと見えないにもかかわらず、このように実現することが多い理由としては、まず第一に「多くの投資家がそのアノマリーの通りにふるまうこと」があるのではないか、と言われています。これらのアノマリーが有名であり、多くの投資家がそれを意識して投資判断を下すために、結果アノマリー通りに相場が動くよう圧力がかかる、というのです。
個人投資家はいま増加傾向にあり、こうしたアノマリーを知る人も増えています。たとえアノマリーが何ら根拠のないものだったとしても、多くの投資家がそれを意識してふるまうと、そこにはトレンドが生まれ、実際に相場が動くこともあります。
サザエさん効果やジブリ効果を盲信するのはおすすめしませんが、こうしたアノマリーを頭に置いたうえで、市場心理や相場の動きを読みつつ投資判断を行うことで、思ったよりも効果が上がることがあります。