今週末の4月23日に迫ってきたフランス大統領選挙ですが、決選投票に進む候補者を予想し、為替への影響を考察します。
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フランス大統領選の決選投票に残る候補者
フランス大統領選挙が4月23日に迫ってきました。
2017年のフランス大統領選は11人が立候補していますが、世論調査から決選投票に残る有力候補者は、4人に絞られています。
極右政党の国民戦線の党首マリーヌ・ルペン氏と独立系中道派のエマニュエル・マクロン氏、中道左派のフランソワ・フィヨン氏、極左派のジャン=リュック・メランション氏の4人です。
まずは、この4人の主張と支持率をまとめてみましょう。
支持率 | 政治思想 | 主張 | |
マクロン氏 | 23% | 独立系中道派 | 親EU、経済改革 |
ルペン氏 | 22.5% | 極右派 | 反EU、反移民 |
フィヨン氏 | 19.5% | 中道左派 | 親EU、緊縮財政 |
メランション氏 | 19% | 極左派 | 反EU、社会主義的 |
上記のように有力候補者のうち親EUと反EUが2人づつとなっています。
エマニュエル・マクロン氏
マクロン氏は、今のところ一番大統領に近い候補者と言えます。
第1回目の投票も支持率が高く、決選投票進出する可能性が高く、決選投票でもルペン氏やほかの候補者に勝利すると言われています。
政策は、親EU派で投資とビジネスの規制緩和による経済成長を促すものです。
マクロン氏は、政治家経験がなく、投資銀行から経済産業デジタル大臣を経験して、昨年独自で党を立ち上げて大統領選に立候補しています。
フランス大統領選の第1回目の特徴として、既存政党への不満から投票する場合が多く、マクロン氏は、その意味でも政治家経験がなく、既存の政治から離れていますので、幅広く支持を集めやすいと言えます。
しかし、熱狂的な支持層がいるわけではなく、支持を変えないといった割合が、ルペン氏やフィヨン氏より低く、浮動票に支えられているといった印象を受けます。
マリーヌ・ルペン氏
ルペン氏は、極右政党の国民戦線の党首で今回のフランス大統領選の主役と言ってもいいでしょう。
反EU、反移民の政策をはやくから訴えていて、第1回投票の支持率が早い段階から1位になっていました。
フランス第一主義をかかげて、公約にユーロ離脱、当選6か月以内にEU離脱の国民投票を実施するといった過激な公約が多くあります。
支持基盤も盤石でルペン氏支持の人の80%以上が投票者を発行しないと回答しています。
決選投票に進む可能性はかなり高いのですが、各種の世論調査では、決選投票では敗れると出ています。
フランス大統領選挙は、第1回目は現政権の批判票が多くなりますが、決選投票になると保守的になりやすい傾向がありますので、極右政党のルペン氏は不利になると言われています。
フランソワ・フィヨン氏
フィヨン氏は、元首相でぎかいでも多数派の共和党に所属していて、当初は、大統領候補NO1でしたが、妻への縁故採用のスキャンダルで支持率を大きく落としていました。
フィヨン氏のスキャンダルは、まさに既存政治への不満が形にあったようなもので、現在の政治に失望している人には大きなマイナス点となり、支持率も25%あったものが一時は17.5%まで下がってしまいました。
フィヨン氏の政策は、親EU派で小さな政府を標榜しており、現在のフランス経済を考えると支持されない可能性があります。
決選投票に進む確率は半々といったところですが、ルペン氏との対決になった場合は、フィヨン氏が勝利すると言われています。
ジャン=リュック・メランション氏
メランション氏は、最近支持率を伸ばして来た第4の候補者です。
社会主義者で極左派で極端な所得の再配分などを政策として掲げています。
もともとは、左派の代表としては、現職大統領のオランド大統領がなるのが通常でしたが、オランド大統領の支持率があまりにも低すぎて、現職大統領が2回目の大統領選を辞退するという初めての事態になり、与党の保守党候補として、本命と目されたバルス首相がブノア・アモン氏に敗れたことで社会党が分裂し、左派統一候補を立てることができなくなり、アモン氏とメランション氏が立候補することになりました。
その後、アモン氏は、目立った活動ができず、社会党支持者をメランション氏に奪われ、メランション氏の自分のキャラが登場する「財政コンバット」などのゲームをリリースしたり、演説会場でスターウォーズのような3Dホログラムを利用するなど若者へのアピールが功を奏し、急激に支持率が伸びています。
メランション氏は、社会主義者であるので過激な富の再配分などを公約にしており、高額所得者の所得税を90%するなどなかり過激な意見を出しています。
反EU派でもあり、EU離脱も選択肢にあると話しています。
メランション氏が決選投票に進むのは難しいと思われていますが、メランション氏とルペン氏が決選投票になった場合は、メランション氏が勝利すると言われています。
フランス大統領選挙の決選投票の結果予想と為替への影響
4人の候補者が決選投票に進む可能性が高く、組み合わせとしては、6組あります。
世論調査の結果がありますので、見てみましょう。
○決選投票時の支持率
支持率 | ||
マクロンvsルペン | マクロン 63% | ルペン 37% |
マクロンvsフィヨン | マクロン 64% | フィヨン 36% |
マクロンvsメランション | マクロン 55% | メランション 45% |
フィヨンvsルペン | フィヨン 56% | ルペン 44% |
メランションvsルペン | メランション 60% | ルペン 40% |
メランションvsフィヨン | メランション 60% | フィヨン 40% |
※敬称略、参照:ELABEのHP上のIpsos調査結果より
今回のフランス大統領選挙の決選投票での上記の組み合わせでの勝利は、
・ルペン氏は、どの候補が出てきても負ける
・フィヨン氏は、ルペン氏だけに勝利
・メランション氏は、マクロン氏以外には勝利
という形になっており、意外にもメランション氏の勝率が高いことがわかります。
マクロン氏以外の候補がメランション氏と決選投票を争う場合は、左派の勢力がメランション氏を推すことで高い得票率が期待できるので、ルペン氏とフィヨン氏に勝利する予想となっています。
マクロン氏は、今のところは、広く支持を集めていて、3候補誰が来ても優位に戦えるようです。
逆にルペン氏は、決選投票に進むのは確実とみられていますが、決選投票では、だれが相手でも敗れるという世論調査の結果でした。
ルペン氏とメランション氏が勝った場合は、フランスのEU離脱の可能性が高まることにあります。
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フランス大統領選挙の為替への影響
6ケースの決選投票の場合に為替にどのように影響を与えるか考えて見ましょう。
マクロン氏vsルペン氏
決選投票の組み合わせとして一番可能性が高い両者です。
第1回投票の支持率が3月からずっと1位と2位で来ています。
この場合は、極右派のルペン氏の反対票が、すべてマクロン氏に流れると思われていますので、すべての世論調査でマクロン氏が60%以上の支持率で勝利するとなっています。
この2人が決選投票に選ばれた場合は、マクロン氏有利ということで市場は、リスク後退になる可能性が高く、円安になっていくと思われます。
ただし、2016年の英国EU離脱とトランプ大統領誕生での世論調査が当てにならないという事実があるので、上値が重い展開になると思われます。
一部の投資家は、リスクを警戒して、取引をしないという可能性があります。
ドル円為替は、110円を上値に109円台後半での推移になりそうです。
マクロン氏VSフィヨン氏
決選投票では、この組み合わせが2番目に可能性があると思われます。
世論調査では、マクロン氏の勝利になると思われています。
フィヨン氏はスキャンダルも響いていて、第1回投票も決選投票もあまり強い結果にはならなそうです。
この組み合わせになるとマクロン氏もフィヨン氏も親EU派ですので、一番、市場が安心すると思われます。
リスクオンになり、円安に進む可能性が高いです。
ドル円為替は、110円前後になるのではないでしょうか。
マクロン氏vsメランション氏
決選投票でこの組み合わせになる確率は低いですが、マクロン氏の勝利になると思われています。
しかし世論調査での支持率を見てみるとルペン氏やフィヨン氏の時より、メランション氏の支持率が上がっていて、マクロン氏が若干苦戦している様子がうかがえます。
メランション氏が決選投票に進む場合は、左派は合同して、メランション氏に投票する可能性が高く、第1回投票よりも支持率が上昇する傾向にあると思われるためです。
可能性は少ないですが、現政権が社会党ですので万が一得票率が低い場合は、組織票でメランション氏が勝利する可能性もあり得なくありません。
メランション氏の決選投票への進出は、市場へもリスク要因として移ると思われますので、円高になりそうです。
ドル円為替は、108円~109円前後まで円高になるのではないでしょうか。
フィヨン氏vsルペン氏
決選投票でのフィヨン氏とルペン氏の組み合わせは、世論調査の支持率では一番ルペン氏に勝ち目がある組み合わせとなります。
ルペン氏が決選投票に進む場合は、反極右勢力がすべて対立候補に回るので、ルペン氏が勝利することは難しいのですが、フィヨン氏は、現体制側でスキャンダルが発生しているという悪条件が重なっています。
現職のオランド大統領が立候補辞退に追い込まれるくらいに現政府に不満を持っているフランス国民ですから、元首相でスキャンダルがあるフィヨン氏は、不利な立場にあります。
世論調査では、それでもフィヨン氏が55%で勝利すると出ていますが、これくらいの差では、投票を決めていない人が40%いると言われている状況では、容易にひっくり返る状況です。
ルペン氏の勝利でEU離脱が一番可能性が高い組み合わせではないでしょうか。
ルペン氏の勝利の確率が高まり、市場に不透明感が増すので、円高に動くと思われます。
ドル円為替は、108円~109円前後の円高になるのではないでしょうか。
メランション氏vsルペン氏
市場に一番混乱を巻き起こすのがこの組み合わせではないでしょうか。
極右派vs極左派となり、どちらを選んでも極端な政策になることになります。
さらに2人とも反EU派でEUの屋台骨を揺るがしかねません。
世論調査ではメランション氏が勝利すると出ていますが、正直、どちらが勝つかわかりません。
どちらにしてもフランスのEU離脱が現実味を帯びてくる組み合わせです。
フランス国債が売り込まれて、ユーロも下落して、「有事の円買い」になり、大幅な円高になる可能性があります。
ドル円為替は、大幅な円安になり、一時的に105円前後まで下落するのではないかと思われます。
メランション氏vsフィヨン氏
決選投票の組み合わせとしては、いちばん確率が低いと思われます。
世論調査での支持率3位と4位です。
こちらは、世論調査の結果ではメランション氏が勝利するとなっています。
フィヨン氏は、スキャンダルがかなり尾を引いて、不利になっている印象です。
この組み合わせは、想定していない市場関係者も多いので、実際にこの組み合わせにあった場合は、かなりの動揺が市場に走る可能性があり、為替が大幅に動く可能性があります。
ドル円為替は、パニック的に一時的には、105円を切ることになりそうですが、しばらくすると少し戻して107円~108円前後になるのではないかと予想します。
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フランス大統領選の決選投票と為替への影響
現在の4候補者の支持率は、3%~4%の間に4人がひしめき合っている状況ですので、まだ投票を決めかねている人が40%近くいる状況では、決選投票にだれが出てきてもおかしくない状況です。
選挙当日が晴れれば若者の投票率も高くなり、マクロン氏が有利になるなどいろいろな説が飛び交っています。
今回のフランス大統領選挙の第1回投票で円安になるには、マクロン氏が決選投票に進むことが必要です。
マクロン氏とフィヨン氏になるのが市場市場に安心感を与えますが、ルパン氏が決選投票に進む確率が高いので、どうしいてもリスク要因が残ってしまうと思われます。
フランス国民の大部分は、EU離脱を望んでいないと言われていますので、今回の大統領選挙の結果でフランスがEU離脱する可能性は限りなく低いですが、ないとは言い切れません。
最悪のシナリオも想定しつつ、フランス大統領選挙の結果を見て、トレードをしていきたいと思います。
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