さきごろ約7%もの急落が起きていたトルコリラ円レートですが、きのう27日、ふたたび急激なレート下落に襲われ、その非常に大きなボラティリティから、市場は異様な雰囲気に包まれています。
前回と今回のトルコリラ円急落を詳細に分析しつつ、今後のトルコリラ円FX見通しについて解説します。
このページの目次
3月下旬、トルコリラ二度目の急落
このところの原油高も重荷となり、弱気相場が続いてきたトルコリラ円レートですが、この3月下旬に入ってから、極めて大きな下落が連続して発生しており、きわめてボラティリティの高い状況となっています。
直近の急落2つの比較
まず先週22日(金)にトルコリラ円レートは20.2円の水準から18.8円まで下落しています。こちらはおおむねマイナス7%の下落となります。
その後レートは急激に立て直し、3月高値にも迫る20.7円まで上昇したものの、昨日27日(水)には再びボラティリティが高まり、今度は20.7円から19.7円まで、おおむねマイナス5%の下落となっています。
上記チャートのローソクを見ると、22日が鋭く一方的な下落であったのに対し、きのう27日の急落はやや小幅ながらも激しい騰落が起きており、ボラティリティが極めて高かったことが伺えます。
これら急落の背景をひもといてみると、直接的にはそれぞれ別の要因で発生した急落である一方、根源的なところで共通している、ということがわかります。
22日急落は「下地」の材料があった
まず、先週22日の急落は、米トランプ大統領がゴラン高原の主権が占領国イスラエルにあるとするツイートに対し、トルコ・エルドアン政権が反発したことで、両国間の緊張が高まったことが背景である、との見方が大勢となっています。
両国間の緊張が、トルコの対米関係悪化、ひいては外貨に頼らざるを得ないトルコ経済の見通し悪化に繋がり、トルコリラの下落を引き起こした、という見方です。
急落の下地はトルコ雇用統計の悪化?
しかし、実際のところは、こうした対米関係悪化懸念はきっかけに過ぎない可能性があります。
22日の急落は、それに先がけた15日(金)発表のトルコ雇用統計の大幅悪化や、18日(月)発表の住宅販売の悪い結果をうけ、売りの契機を伺っていたヘッジファンドが、このたびのゴラン高原をめぐる両国の対立表面化をチャンスと見て、売りを仕掛けたのでは、との見方が浮上しています。
高金利通貨トルコリラの買いポジションが積み上がっているところへ、地合いが悪い中で出た米・トルコ報道後にリラが売られそうなタイミングで、ヘッジファンドが空売りを浴びせ、ストップロス売りオーダーを巻き込んでレート急落をうながしたのではないか、という見方です。
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トルコ中銀対応でひとまず下げ止まるも…
22日の急落で、トルコリラ円は、それまで心理的節目とされていた20円を割り込み、さらに19円をも割り込んで18円台まで下落しました。
しかし、外国からの物資調達割合が大きいトルコにとって、通貨安は極めて危機的な状況と言えます。さらに、今月末に地方統一選を控える、エルドアン率いる与党AKPにとっては、このような事態は選挙の結果を揺るがしかねない事態と言えます。
そのため24日、トルコ中銀は、トルコリラの市場供給を極端に減らし、スワップ金利の上昇をはかりました。
これにより、トルコリラの売りポジションを持ったときのスワップ金利(売りポジションなので、金利分が毎日発生するコストとなる)が極めて高くなってしまいました。つまり、これ以上のトルコリラ売り仕掛けを事実上困難にする措置でした。
またその一方で、金利が高いトルコリラへの買いも殺到しました。
これによりトルコリラ円レートは急速に回復します。
これが、27日急落前の、最初の急落と立ち直りの大まかな流れとなります。
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27日急落の原因は自国内のリラ売り
このようなトルコ中銀の対策が奏功したかに見えたのもつかのま、27日に再びトルコリラ円は急落します。
スワップ金利の上昇によりヘッジファンドの売り仕掛けが激減したなかで、今度のトルコリラ円下落を主導したのは、トルコの国内投資家による外貨需要であったと報じられました。
激烈なインフレ(物価高騰)に苦しむトルコでは、信用不安により価値下落していく自国通貨トルコリラではなく、安全通貨であるドル、あるいは円やユーロといった外貨への需要が高まっています。
事実、すでにトルコ国内でも、リラではなくドル決済で国内取引を行う流れが出てきているとの情報もあります。
そこへ、今回のトルコリラ急落でさらにリラ不安をつのらせたトルコ国民が、いっときトルコリラが急落から立ち直ったタイミングでトルコリラを売り払い、より価値の安定した外貨に替えておこう、と考えるのは、自然な話と言えます。
しかし一方では、スワップ金利の上昇によりトルコリラの買いポジションを取りたい外国投資家たちも少なくありませんでした。そこで、戻り待ちのトルコ国内投資家の売り圧力と、下値を拾いたい海外投資家の買い圧力がもみ合い、27日のボラティリティの高い相場を作ったのではと考えられます。
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今週以降のトルコリラ円見通し
そして今日28日(木)日中、トルコリラ円レートへの下落圧力はいぜん継続しており、20.00円のラインを一時上抜けるも阻まれ、16:00現在は再び19円台へと沈んでいます。
きのうのロンドン市場では、リラのスワップ金利が一時100%を超えるなど、異様な状況になっていると報じられており、また統一地方選までになんとしても事態改善へと向かいたいトルコ・エルドアン政権は、国内銀行に対して、少なくとも31日までは、海外市場でのリラ流動性を抑制するように指示を出しているとも報じられています。
統一地方選結果が鍵
このトルコリラ不安(トルコ信用不安)は、すでに日本株価などにも波及しており、このままの状況が継続すれば、やはりトルコリラ急落に端を発し世界株安・経済不安へとつながった昨年のトルコリラショック(対円レートで40%ほど下落)のような事態が起きる可能性もあります。
さらに、注目の統一地方選では、与党に対し野党の優勢も報じられており、与党(与党連合)が敗北することになれば、トルコリラ円レートにも大きな影響が出ることが予想されます。
こちらの選挙結果が判明するのは、日本時間4月1日(月)未明と見られます。週明けまで、トルコリラの動きとトルコ情勢にはじゅうじゅう注意を払っておく必要があるでしょう。
→今日のトルコリラ円FX レンジ予想(今週・今月のレンジ予想も)
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今月のトルコリラ関連イベントスケジュール
このほか、トルコリラ円に影響を与えうる経済指標公表などの今月のスケジュールは、下記の通りです。
※状況に応じ変更となる可能性があります。
これから予定されている今月のイベント
3/29(金)16:00 2月貿易収支(前回値 -25.0億ドル)
すでに終了した今月のイベント
3/1(金)16:00 2月製造業購買担当者景気指数(PMI)(前回値 44.2、結果 46.4)
3/4(月)16:00 2月消費者物価指数(CPI)(前年同月比)(前回値 20.35%、事前予想 19.90%、結果 19.67%)
3/4(月)16:00 2月消費者物価指数(CPI)(前月比)(前回値 1.06%、事前予想 0.40%、結果 0.16%)
3/6(水)20:00 トルコ中銀、政策金利(前回値 24.00%、事前予想 24.00%、結果 24.00%)
3/11(月)16:00 10-12月期四半期国内総生産(GDP)(前年比)(前回値 1.6% (1.8%)、事前予想 -2.7%、結果 -3.0%)
3/11(月)16:00 1月経常収支(前回値 -14.4億ドル (-15.2億ドル)、事前予想 -8.3億ドル、結果 -8.1億ドル)
3/14(木)16:00 1月鉱工業生産(前月比)(前回値 -1.4% (-1.3%)、事前予想 0.3%、結果 1.0%)
3/15(金)16:00 12月失業率(前回値 12.3%、事前予想 12.8%、結果 13.5%)