このところのトルコリラ円レートは堅調に推移しており、週足では続伸3週目となっています。
背景としては、政策金利据え置き決定やサウジ記者事件に関する国際的な存在感の上昇があり、さらにトルコリラ円のトレンドも上昇局面へ入りつつある状況が見て取れるため、地合いが中長期的な視野で好転してきていると言えます。
きょうまでの大きなニュースとともに先週までの動きを振り返りつつ、今週のトルコリラ円レートについて見通しを発表します。
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先週のトルコリラ円振り返り
先週後半から今日29日(月)にかけてのトルコリラ円レートは、高値20.171円から安値19.266円のレンジで堅調に推移しています。
中銀、エルドアンの圧力に屈せず
先週25日(木)には、トルコ・政策金利の発表が行われ、結果は市場予想通りの据え置き(24.0%)となりました。
発表の直前には、利下げ(金融緩和)で国内からの支持を固めたいトルコ・エルドアン大統領よりトルコ中銀へ「利下げ要請」が行われるというサプライズもありましたが、にも関わらず、トルコ中銀は、高インフレを静めるため政策金利を維持する決断を下したことになります。
金利据え置き支えに20円再突破
この決断は、トルコのインフレ抑制対策となるのに加え、トルコ中銀の独立性の担保ともなり、これを市場は好感、トルコリラ円レートも発表に前後して一段高となり、さらに週末には、節目の20円を一時上抜けました。
週引けには一歩手前の19.985円で終えたものの底堅く、週明けとなる今日29日(月)の夕方には再び一段高となり20円を上抜け、17時現在は20.1円周辺で推移しています。
8月の急落が「底打ち」となるか
政策金利発表が市場にとって前向きな結果となったことで、トルコリラ円レートの地合いは改善しています。
トルコリラ円レートは、8月に市場最安値15.416円をつけて以来、おおむね右肩上がりで推移してきています。そこへ、さらにビッグイベントの政策金利発表をこなしたことで、上昇トレンドへの転換がより意識される状況です。
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サウジ記者事件とトルコ外交
さて、現在トルコ関連で最も注目されているニュースは、サウジアラビア人記者殺害事件をめぐる国際情勢と言えます。
結託するトルコ、窮地のサウジ
イスタンブールのサウジ領事館で、サウジ政権に批判的であったサウジ人記者のカショギ氏が行方不明になり、国際的な追求を受けたサウジは、ついに記者が死亡した旨の発表を行いました。
これに対し、すでにトルコ・フランス・ドイツ・ロシアの四カ国が首脳会談を行うなど、サウジへの風向きは強まっています。
サウジと距離を置かざるを得ない米国
サウジは米国にとって重要な武器輸出先であり、サウジの劣勢は米にとっても不利益となります。
さらに、石油立国であるサウジにとって商売敵といえる隣国カタールがこのところ存在感を増しており、オイルマネーがサウジからカタールに向かえば、サウジと米国は不利な状況に置かれます。
自国に有利に立ち回るトルコ
一方のトルコは、「サウジ記者事件の真相を握った」と発表しつつ情報を小出しにするなど、本件についての主導権を握りつつあります。トルコはカタールとも協力関係にあり、現在はトルコに有利にことが進んでいるように思われます。
トルコと米国は長らく対立関係にありましたが、その一方で、トルコは超大国・米国と対立していいことなど何もなく、米国も、国際的な存在感を増すトルコと協調の道を拓いたほうが国際的に不利益を被らずに済みます。
サウジ記者事件をめぐるトルコ・エルドアン大統領の立ち居振る舞いは今のところ、
・自国の存在感を高め、
・米をサウジと引き離して自国側につけ、
・中東の有力国サウジへの影響力を増す
といったところで、効果的にはたらいていると見ることができます。
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今週のトルコリラ円レート見通し
金利据え置きに、サウジ事件にかかわる国際的な存在感の高まりなど、今週にトルコを取り巻く状況はいずれもトルコリラ円レートの支えとなりそうです。
なお、今週31日(水)には、トルコ・9月貿易収支が発表予定となっています。こちらも今回改善予想(前回-24.2億ドル、今回予想-19.0億ドル)となっており、トルコリラ円レートの堅調な推移を下支えしそうです。