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ひふみ投信―直販投資信託を調べてみたシリーズ2

ひふみ投信

ひふみ投信とは?

 ひふみ投信とは、レオス・キャピタルワークス㈱が2008年10月から販売している投資信託です。
代表の藤野英人氏は、中野晴啓氏(セゾン投信㈱代表)、渋澤健氏(コモンズ投信㈱代表)と共に、「草食系投資隊」を結成しています。

これは、とかく株式など金融商品への投資が、がつがつと短期売買で利ざやを追及する肉食的な「投機」というイメージで捉えられていたのに対し、草食系動物がゆっくり草を食むように、長期的な視点で資産を形成し、また、企業や国内経済の成長を見守る、草食的な投資の魅力をアピールし、日本の文化に投資の文化を根差すことを目的としているものです。

 長期的な資産形成に向けた投資という点では、草食系投資隊の3者(社)の理念は一致しているのですが、ひふみ投信は、国内株式を中心とした「アクティブ投信」でやや肉食系よりであり、他の2者(社)の投信商品は、日経平均などの指標に連動するインデックス投信や国内外の株式や債券にリスク分散して投資するバランス投信、つまり「パッシブ投信」である、という点で大きな違いがあります。
これは、中野氏や渋沢氏がヤギのようなまさしく草食系男子であるのに対し、藤野氏がサイのような風貌であることと関係があるのかもしれませんね。

 ひふみ投信のモットーは「守りながらふやす運用」です。これは、株式という乱高下の激しい市場、商品において、投信に組み入れる銘柄を将来的な成長が見込める企業かどうかの観点から厳選して運用益を確保するとともに、経済情勢によってはポートフォリオ(投信の銘柄の構成)を柔軟に見直し、損失を抑えることをめざしているのです。

○ひふみ投信
http://123.rheos.jp/

ひふみ投信の銘柄

 ひふみ投信に組み入れている銘柄は国内外の株式です。そして、その半分までを現金や債券など、株式以外の金融資産で運用することとしています。例えば株式が暴落し、当面その傾向が続きそうだというときには、資産の半分までを現金に換金して、リスクを回避しています。「守りながらふやす運用」の実践が、このファンドのポートフォリオの考え方に、明確に現れています。

 組み入れる株式の銘柄は、そのほとんどが国内の株式です。ひふみ投信のファンドマネージャが企業の経営者にヒアリングを行い、企業の現場を実際に見て、企業の成長性を見極めています。つまり足を運んで有望銘柄を発掘しているわけです。
運用チームが「この企業のミッションは何か?」、「この企業が作っている製品は世の中に必要とされているか?」といった視点で企業を発掘し、株価水準が割安と考えられる企業に投資しているのです。このあたりが、単なる株価の動向や社会情勢でファンドに組み込む銘柄を判断しているファンドとは、一線を画しています。

 組み込んでいる株式の銘柄は、東証上場一部もあれば、マザーズなどその他の新興市場、そして株式上場前のIPO銘柄も組み込んでいるところがユニークです。実際、2016年7月度の月次レポートでは、国内株式96.2%、現金等3.8%となっており、海外株式や債券は一切含んでいません。

組み入れ銘柄比率
1位あい ホールディングス3.30%
2位ソニー2.70%
3位ダイフク2.10%
4位堀場製作所2.00%
5位SCREENホールディングス1.90%
6位GMOペイメントゲートウェイ1.90%
7位ニコン1.80%
8位ジェイコムホールディングス1.80%
9位アウトソーシング1.60%
10位トラスコ中山1.50%
※2016年7月度ひふみ投信月次報告書より


組み入れ銘柄の上位10社です。すべて東証一部です。

市場別では東証一部82.6%、東証二部1.5%、マザーズ5.4%、JASDAQ6.7%、現金等3.8%となっています。リスク回避型の一般的なバランス投信では、概ね国内外それぞれ2分の1、その2分の1づつが株式と債券という構成になっているのとはかなり違います。
ひふみ投信の基準価格は、日経平均の伸びを大きく上回っていますが、「守りながらふやす運用」が大きな成果を生んでいると言えるでしょう。

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ひふみ投信の評判

 ひふみ投信の評判は概ね良好です。ファンドとして良好な収益を上げていますし、手数料が格安なのが魅力です。まず口座開設・口座維持・口座解約手数料は無料です。信託報酬も税込で年1.0584%(税引前0.98%)と、アクティファンドとしては格安です。さらに、資産形成応援団(信託報酬一部還元方式)というユニークなシステムがあります。これは、5年以上保有の場合には年率0.2%、10年以上保有の場合には年率0.4%の信託報酬を、新たな買い付け資金として顧客の口座に還元するというものです。まさしく顧客の長期的な資産形成を応援するシステムなのです。

 情報公開についてもホームページで活発に行われており、運用部が個々の顧客の質問にもやさしく答えています。
 運用成績、コストの安さ、手厚いアフターフォローなど、ひふみ投信は顧客の幅広い支持を得ています。

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ひふみ投信の利回り

○ひふみ投信の2016年7月度報告書より騰落率

1か月3ヶ月6か月1年3年設定来
ひふみ投信2.8%-0.3%0.2%-3.5%66.2%229.4%
TOPIX6.2%-1.2%-6.6%-18.6%24.0%42.3%

TOPIXの登録率と比べた資料がひふみ投信の資料に乗っています。
直近の1か月を比べるとTOPIXのほうがちょっといいですが、1年、3年とみるとひふみ投信のほうがかなり成績が良いです。
信託手数料の差を考慮してもひふみ投信のほうがTOPIXのインデックスファンドよりリターンがいいでしょう。

○1年騰落率比較

2009年2010年2011年2012年2013年2014年2015年
ひふみ投信10.21%1.86%-1.30%22.17%67.96%13.99%21.75%
TOPIX5.63%-0.97%-18.94%20.86%54.41%10.27%12.06%
※各年の12月の報告書の過去1年の騰落率

2009年から2015年までの1年ごとの騰落率を比較するとすべての年でTOPIXの騰落率を上回っています。
特筆すべきは、2010年と2011年のTOPIXがマイナスの時に比較すると2010年はプラス、2011年は、成績はマイナスですが、-1.3%とTOPIXが二桁マイナスなのに対して、かなりマイナスが抑えられています。

モットーである「守りながらふやす運用」というのが数値で分かる内容です。

これは、TOPIXが時価総額加重平均なので大型株に連動しているのに対して、ひふみ投信は中小企業株を中心に運用しているため、違いが出ているものと思われます。
今のところは、良い方向で違いが発揮されているようです。

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ひふみ投信とひふみプラスの違い

 ひふみ投信は運用会社であるレオス・キャピタルワークスへの、本人名義の総合取引口座の開設が必要となります。つまり、他の金融機関等では購入することができません。
 他方ひふみプラスは、ネット証券を含む多くの金融機関から購入できます。ただし、手数料に違いがあり、おおむねひふみ投信よりも割高になります。また、ファンドの組成はどちらも同じなのですが、なぜか基準価格に大きな開きがあります(1.5倍以上、ひふみ投信が高くなっています)。これだけをみると、ひふみ投信の方がメリットがあるようですが、次のNISAでの運用を考えた場合、ひふみプラスの方が便利かもしれません。

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ひふみ投信とNISA

 NISAは毎年120万円を上限とした株式・公募株式投資信託の新規購入分に対し、その譲渡益(売却益)や配当・分配金を最長で5年間非課税にする制度であり、小額からの積立型の長期保有資産形成を狙いとした制度です。
ひふみ投信もこの制度の狙いに合致する投信であり、NISA口座で運用することができます。

ただしNISA口座は、1口座しか保有することができません(毎年、他の金融機関に乗り換える、つまり口座変更は可能です)。ひふみ投信の場合は、レオス・キャピタルワークスに口座を開設することになり、同社はひふみ投信以外の商品を扱っていないので、NISA口座はひふみ投信のみで運用することになります。

一方、ひふみプラスは、複数の金融機関が取り扱っています。それぞれの金融機関の取り扱い商品の種類や手数料などに違いはありますが、NISA口座で複数の金融商品(投資信託)を運用したい場合は、ひふみプラスを選択するしかありません。逆に、インデックス投信を中心に運用したいけど、有益性も狙いたいという場合は、ひふみプラスを取り扱っている金融機関を選ぶのがいいでしょう。

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ひふみ投信のまとめ

 ひふみ投信は、現在のところローコストで運用できるローリスク、ハイリターンな投資信託商品であるといえるでしょう。発行以来基準価格は3倍を超え、純資産総額も310億円を突破していることも、ひふみ投信の実績を物語っています。リスクが低くリターンが高いファンドに贈られるR&Iファンド大賞を投資信託/国内株式部門で4年連続受賞しているという、大きな栄誉にも輝いています。

 ファンドマネージャーが足で情報を収集し、その企業の価値を見極めて投資する、という姿勢にも非常に好感が持てます。しかし、今年2016年は年初以来世界経済が混乱しており、この先行きも不透明です。ひふみ投信を過信しすぎるのは禁物でしょう。
 しかしひふみ投信がめざす投資のすそ野の拡大、それにより有望な企業の成長を支援し、国内経済の成長を達成する、という心意気は、今日の私たちにとって価値あるものではないでしょうか。

 また、ひふみ投信は、誕生後10年に満たない若い商品です。ファンドが巨大化すると当初の理念を貫くことが難しくなり収益が悪化するのでは、という懸念の声も聴かれますが、どうかひふみ投信は初志貫徹で、優秀な運用を持続してほしいものです。

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