株式投資の方法論は、大まかにいくつあるのでしょうか?よく、メディアでは、よくテクニカル派とか、ファンダメンタルズ派、そしてマクロ派という言葉を耳にします。
いったい、株式投資の分析方法は大まかにどのように分類され、それぞれ何を主張しているのか?今回は、株式投資法についてまとめてみました。
「ウォール街のランダムウォーカー」の著者バートン・マルキールはその著書の中で、株式市場の売り買いの的確なタイミングをつかむためよく知られた手法として、皆さんもご存知のテクニカル派とファンダメンタルズ派を挙げ、これらのゲームに反旗を振りかざす形で「思考停止型派」とでもいうべき彼の「分析しない投資法」を説明しています。
【テクニカル分析派】
テクニカル分析は、簡単に言うと株価チャートを作り、それを解釈することです。
彼等の分析対象は、株価や出来高らの推移に関する過去の分析から、今後の相場の手がかりを予見しようとするのです。
テクニカル分析を信仰する人達をチャーチストを呼び、彼等は、株価の動きの9割型は人間の心理的な要因だという考えに基づいています。
マルキールは、テクニカル分析をほぼ嘲笑するように「砂上の楼閣学派」などと呼んでいますが、その創始者はなんとあの著名な経済学者ケインズだというからびっくりです。
ケインズによれば、プロの投資家というのは群集心理により一般投資家がどのように行動し、強気相場の中で、希望的観測が相場の暴騰を生むのかを分析することに集中する。
優れた投資家は、どのような市場の状況が市場の暴騰を生むかを探り当て、一般投資家の気づく前に行動することで、ゲームに勝つことができると説明するのです。
ケインズは実際、市場の群集心理側面を重要視したアプローチを用い、何百万ポンドという資産を増やし、母校のケンブリッジ大学ファンドマネージャとして何百万ポンドも基金を増やした実績があるのです。
マルキールは、この群集心理に基づく株価形成について、投資は自己増殖的なプロセスと考えられ、「そういう世界では、絶えずおめでたい人が、新たなゲームに加わってくることを想定している。そして、同じものをあなたが払ったより高い値段で誰かが買ってくれることになる。」と表現しています。
そこには、何の理屈もなく、集団心理だけが支配する世界なのです。これは、私達がこれまで何度も見て来たバブルの状態ですね。マルキールはこのゲームを「より馬鹿」理論として、揶揄しています。
マルキールは、テクニカル分析派を明らかにバカにしているように思えます。バカにしてなくても、「株式市場はそうあるべきではない」と訴えているように聞こえます。しかし、私が生きている50年程で、新聞やニュースを見て株式市場の文字が目に入ってくるようになったのは20歳前後だと思います。それからたった30年で、1990年日本の土地バブル崩壊、2000年インターネットバブル崩壊、2008年リーマンショック(住宅バブル)崩壊と3回の大きなバブル崩壊を経験しています。この他にも、1997年に生じたタイバーツ危機なども、タイへの非生産財への過剰投資が原因だと言われており、小さなバブルは国や地域毎に、まだ多く見つけることができるでしょう。
こうしてみると、テクニカル分析そのものについては、私もマルキールと共感しますが、その考えのもととなる「砂上の楼閣」学派については、人々が歴史に学ばず必ず犯してしまう過ちとして循環的に生じる経済現象なのではないかと思います。
しかし、ケインズが株の相場師だったとは、びっくりです。日本で竹中平蔵さんが日本の土地バブルやインターネットバブルで大儲けしたようなものです。そんな話は聞いたことがありませんが、もし大儲けしていてても、本には書かないでしょうねw。
【ファンダメンタル分析派】
ファンダメンタル分析は、テクニカル分析の主張の正反対の立場を取ります。
ファンダメンタル・アナリストは株価の動きの9割は、合理的なものであり、心理的な要因はせいぜい10%にすぎないという考えをベースにしています。
ファンダメンタル派は、株価の過去のパターンよりも、その関心の中心は、株価の適正価値はどのくらいかと言うものです。ファンダメンタリストにとって、株の適正価値は、1株当たり資産価値、利益と配当の期待成長率、金利 、リスクなどによって決まります。
ファンダメンタリストの主張は、任意の株式には絶対的な価値があり、現状分析と将来予測をすれば、その絶対価値を推定できるとしています。
つまり、ターゲットの株式の市場価値が絶対価値を下回れば購入し、上回れば売却すればいいと言うことです。
ファンダメンタリストは、配当の成長率に注目している。株式の価値は、将来、企業が支払う配当の量で決まると主張しています。現在の配当水準と将来の増加率が大きければ大きい程、株式の価値は高いと言うのです。
ファンダメンタリストの考え方は、株式の本来の価値を分析する上で優れた考え方です。
しかし、配当の成長率を予測するということは、将来の利益予測という、未来の景気や業界の予測まで含んだ分析をしなければならない。
ファンダメンタルズ分析は、将来の成長の程度や期間について、あまりはっきりした根拠のない予測に大きく依存しているところがその弱点のようです。
ただ、このファンダメンタル理論を元にバリュー投資で大成功したのがあのウォーレン・バフェットだということも、我々は覚えておかなければなりません。
マルキールによると、ウォール街の証券アナリストの9割はファンダメンタリストだと見なしており、テクニカルアナリストは少数派だと言うことです。
【思考停止型派】
マルキールは、テクニカル派、ファンダメンタルズ派の分析手法や実績を説明し、どちらの方法を使っても市場平均を上回るパフォーマンスを上げる難しさを説いている。そして、個人投資家が実施するべき投資法として、「分析しないでインデックス株を長期保有」する「思考停止型投資法」を勧めている。その具体例として、S&P500指数そのものに投資し、長期すれば投資のプロを上回るパフォーマンスを余計なコストを払わずに達成できるとしています。
インデックスファンドに長期投資が他の投資法より優っている主な理由として、次のような点を挙げています。
2)インデックスファンドを購入することそのものがリスク分散であること
3)そして、最大のメリットとして株式市場を分析しないでよいこと
マルキールは、インデックス投資を、よりリスクを低減し、リターンを高くする方法としてS&P500よりは、より広範な企業をカバーし、市場の動きをよりよく反映しているラッセル3000やウィルシャー5000、又は他の先進国株インデックスファンド、新興国ファンド、REITなどを組み入れることもすすめている。
私は、2016年4月から「なんらかの株式投資ツールを開発」するプロジェクトを始め11冊の株式投資関連書籍を読み、スタッフとディスカッションしてきた。そして、現時点での結論は、「一般の就業者が実践可能で且つ長期的(10年以上)に見て、より確実に利益をあげられる方法は、この【思考停止型派】投資法」だということです。
一歩進んだ投資方法【省思考型派】
上記の【思考停止型派】投資で、やはり気になるのが他著も含め、多くが日本ではなく、よりダイナミックな経済活動が行われている米国のダウのデータをもとに理論立てされていることです。
私達は、過去の日経平均から「投資の最悪期」がをはじき出しています。
それによると、毎月で同額づつ同じインデックス投資を同額積み立てていた場合、最悪投資開始時は、日本の土地バブル絶頂期で、そこから投資を始めると、積み立てたインデックスファンドの評価額は下がり続け、投資元本を上回るのは73カ月目、つまり投資を始めてから6年1ヵ月目です。
その後も、元本を割ったり、超えたりをしばらく繰り返しますので、これでは個人投資家は精神的に殆どの人が挫折してしまいます。少なくとも私は精神的に耐えられないと思います。
私達は、現在、検証中ですが我が国では1980年代に起ったような土地バブルは暫く起こらず、その崩壊で株価が80%下がる可能性も暫く低いだろうと考えています(バブルの再現性とその深度については、別途何度もデータで検証していく予定です)。
しかし、もし30年前に起きたバブルが再現しても、一般的な人でも比較的簡単に実践でき、市場に打ち勝てるようなインデックス投資法を考えなくてはならないのです。
それは、おそらく、単純な積立ではなく積立方に個人が取れるリスクの範囲で濃淡をつけて行く方法ではないでしょうか?
それは、それほど日々の市場に神経質にならなくとも、1~3か月くらいの単位で積立の重みづけのみを考える【省思考型派】とも呼ぶべきものになると思います。
それでは、文中でも紹介しましたが、まず、辛いことから検証していきましょう。次回は、過去に生じた株価暴落(殆どはバブル後の)について、その期間や再現性について検証を行っていきます。