日本のFXトレーダーにはなじみ深い通貨ペア「ユーロ円」ですが、実は他の通貨セットにはない特徴があるのをご存知でしょうか?
とくにコロナショック後の2020年相場では、その特徴がユーロ円の値動きに大きく影響しています。ユーロ円の特徴について解説したのち、2020年のユーロ円動向を見るポイントを紹介します。
このページの目次
ユーロ円の特長
ドル円に次ぐメジャーな通貨セットが「ユーロ円」と思っている方は多いのではないでしょうか?
しかし実は、世界の外為市場で見ると、ユーロ円はきわめてマイナーな通貨セットです。というのも、そもそもユーロ円は、為替市場で直接取引はされていない通貨セットであるからです。
ユーロ円はドル円とユーロドルの合成通貨ペア
市場では、ユーロ円という通貨ペアが直接取引される代わりに、投資家の注文を受けたブローカーが「ドル円」と「ユーロドル」を同時に取引して、結果的にユーロ円の取引を成立させています。
例:ユーロ円の買い注文の流れ
1. 円でドルを買う(ドル円、ドル高円安)
2. ユーロをドルで買う(ユーロ円、ユーロ高ドル安)
つまりユーロ円は、ドル円とユーロドルを「合成」した通貨ペアなのです。
このため、ユーロ円の動向を見るには、ドル円とユーロドルの動向を把握しておくことが重要になります。
トレンドが強いのはドル円・ユーロドルどっち?
ドル円とユーロドルの合成通貨ペアであるユーロ円の動向を見るときは、ドル円とユーロドルのどちらが強く影響しているかという視点が重要になってきます。
例えば今年2020年7月、EUのコロナ復興債設立によりEU加盟国の早期経済回復期待が立ち上がった結果、ユーロドルは約1か月ほど堅調な展開となりました。
一方そのころ、ドル円はレンジ相場続きでした、このためユーロ円は、より強いトレンドを示したユーロドルにつれて上昇することになりました。
この逆もしかりで、ファンダメンタルズ要因でドル円が大きなトレンドを示している際は、ユーロドルが横ばいもしくはやや逆行するトレンドであったとしても、ユーロ円はより強いトレンドを示すドル円につれて動くことになります。
上から、ユーロ円、ドル円、ユーロドル(日足、TradingView)
ユーロ円は主体性のない通貨ペア
いわばユーロ円は、合成通貨ペアであるために主体性のない通貨ペアと言えます。このため、ユーロ円の取引の際は、ドル円とユーロドルのどちらからより強い影響を受けているか、という視点を持つ必要があります。
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市場のリスク許容度とユーロ円
では、市場のリスク許容度の違い(リスクオン局面、もしくはリスク回避局面)によって、ユーロ円はどのような値動きとなるのでしょうか。
これも、そのときどきの局面でドル円もしくはユーロドルがどのように動くかに応じて決まってきます。
ただ、市場のリスク許容度により反応しやすい通貨ペアがドル円であることから、ユーロ円もドル円の反応に応じて動くことが多いようです。
リスク意識時は主にドル円に同期
ドル円は一般的に、リスクオン時には上昇(ドル高円安)、リスク回避時には下落(ドル安円高)で反応することが多いと考えられています。
このため、リスクオン時にドル円が大きく上昇すればユーロ円も上昇、リスク回避時にドル円が大きく下落すればユーロ円も下落、という動きとなることが多いようです。
ただ、外為相場は常に様々な動きに影響されて動いており、ときには、市場のリスク許容度により大きく反応するのがユーロドルであったりします。このときはユーロ円も、より大きな動きを示すユーロドルにつれて騰落することになります。
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コロナショック以降のユーロ円
では、現在のユーロ円はどのようなトレンドの中にあり、今後どのような動きが予想されるのでしょうか?
まずは2020年3月のコロナショック以降の動きを振り返ってみましょう。
コロナショックから現在と、より大きなトレンド
コロナショック後のユーロ円は、4月にかけて安値114.39まで下落したものの反発、その後は127まで上げており、この1年で見ると上昇トレンドの中にあるようにも見えます。
しかし、より視点を拡げると、ユーロ円は大きな下落トレンドにあることがわかります。
ユーロ円はいぜん大きな下落トレンドの中
コロナショックよりずっと以前の2014年12月高値の149.78、2018年2月高値の137.51、そしてコロナショック後の2020年9月高値126.13を結ぶと、大きな下落のトレンドラインを引くことができます。
このトレンドラインの下にレートが位置している限りは、ユーロ円の下落トレンドは継続中と考えることができます。
こうした長期的視点で見ると、コロナショック後の上昇は「大きな下落トレンドの中での戻し相場」と位置付けることができます。
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2020年末にかけてのユーロ円見通し
こうしたなか、今後のユーロ円を見通す大きなファクターとなるのが、やはりドル円とユーロドルの動向と考えられます。
ドル円は米大統領選、またユーロドルは英EU離脱問題、そしていずれにも共通する新型コロナ禍以降の経済対策と、ユーロ円を構成する2つの通貨セットは、いずれも大きなリスクを抱えています。
目先ではそれぞれ上昇局面も考えられるものの(経済対策など)、広い視点で抱えているリスクは大きいことから、ユーロ円に関しても、ドル円・ユーロドルの動向につれて、当面は上記の大きな下落トレンドのなかでの推移が継続すると考えられます。
2020年末にはトレンドブレイクも
ただし、米大統領選通過後のドル円、ならびに英EU離脱を通過後のユーロドルは、リスク通貨とともに大きな値動きを示す可能性があります。
このときユーロ円も、上記のトレンドを上方ブレイクするか、下方に値幅を拡げるかして、これまでのトレンドから離れる可能性があります。
2020年にユーロ円の取引を行うにあたっては、ドル円とユーロドルという二大通貨ペアのうちどちらのトレンドが強いかを見極めつつ、米大統領選や英EU離脱、あるいはコロナ禍に関連する動きに注意する必要があると言えます。
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