NYダウの続伸傾向が続いています。現在(2017年6月17日)は前日比24ドル38セント高の21,384.28ドルとなり、2日ぶりでふたたび過去最高値を更新しています。
NYダウとは、正しくは「ダウ工業株30種平均(ダウ平均)」といいます。その構成銘柄は、その時々で入れ替えられますが、現在は、アップルやマイクロソフトを筆頭とするIT銘柄、そして小売大手、石油、自動車などの銘柄が組み入れられており、アメリカ経済を代表する株価指標のひとつと言えます。
マクロで見ると無類の勢いを持つかのように見えるNYダウですが、これまでに幾度かの暴落も経験してきました。とくに直近の30年を振り返り、NYダウがどんなときに暴落してきたのかを確認してみます。
このページの目次
30年間のNYダウ暴落原因をひもとく
この30年でNYダウに起きた暴落をリストすると、次のようになります。
- 1987年:ブラックマンデー
- 2000年:ITバブル崩壊
- 2001年:同時多発テロ
- 2008年:リーマンショック(サブプライムローン危機)
1987年:ブラックマンデー
ブラックマンデーは、1987年10月19日の月曜日に起きた、史上最大規模の株価大暴落のことをいいます。
このときNYダウは、前週末比で22.6%(508ドル)もの下落幅を示しました。これは、1929年の世界恐慌時の12.8%を遥かに上回る大きな下落値です。
この大暴落は世界市場へと波及し、イギリス、オランダ、日本でも空前の株価暴落を引き起こしました。
なお、世界恐慌時の急落が木曜日に起きたことから「ブラックサーズデー」と呼ばれているのに引っ掛けて、月曜に起きたこの暴落が「ブラックマンデー」と呼ばれるに至っています。
といっても実体経済への影響は1929年の世界恐慌に比べると小さくて済みました。というのも、世界各国の金融当局が強調して働きかけることで、被害を抑制することができたためです。このことは、大暴落が起きたからと言って必ずしも実体経済を崩壊させるわけではないという実例となっています。
ブラックマンデーが起きたのは、米国の財政、および貿易で、赤字が拡大傾向にあったこと、また米国をとりまく国際経済に不安感が広がっていたことが大きな原因です。さらには、当時実用化されたコンピュータ取引が、株価下落→売り注文 を連鎖的に行ってしまったことも原因とされます。
2000年:ITバブル崩壊
ブラックマンデーから13年後、今度は2000年にもNYダウが大暴落しました。こちらは「ITバブル」あるいは「インターネット・バブル」などと呼ばれます。
その名の通り、こちらは、インターネット関連企業への投資加熱により引き起こされた相場の高騰と大暴落のことです。20世紀末に普及したインターネットと電子商取引(eコマース)は、世界中の投資市場に高揚感をもたらし、米国の多くの企業がインターネット関連投資に走りましたが、下がり始めた株価は急速に暴落へと突き進み、バブル崩壊へとつながりました。
ITバブルの崩壊によって、ほとんどのネット関連ベンチャーは倒産し、またIT設備・ネットワーク機器などの生産減少、さらに半導体などの過剰在庫などと、連鎖的な不況を生み出しました。
ITバブルの原因は、インターネットなどの先端技術に対する世界市場での過度な期待感と言えます。
当時はインターネット関連企業なら天井知らずに株価が上昇しバラ色の未来が開けていると誰もが信じたといいます。その期待加熱を利用して、様々な企業が「ドット・コム」という語を社名の後ろにくっつけて、あたかもIT企業であるかのように見せて株価を釣り上げるようなこともあったといいます。
その、中身がなく空虚な期待感による高騰と暴落をふりかえって、今ではITバブルによる株価高騰を「砂上の楼閣」現象と評することもよくあります。
2001年:911同時多発テロ
ITバブルが崩壊してまもなく、NYダウはふたたび大暴落に見舞われました。
今度きっかけとなったのは、2001年9月11日に発生した同時多発テロです。
テロ発生時に市場は閉鎖され、この間NYダウは722ドルもの下落を起こしました。
もちろん為替にも大きな影響がありましたが、ドル円の変動は121円から115円までの下落となり、相対的にドルが売られ円買いが急伸したものの、米国では国の利益を守るという意識が高まりドル売りに歯止めがかかったとも言われています。
こちらの暴落の原因は有事発生に伴う米国経済への不信感にほかなりません。2003年のイラク戦争勃発の際も、開戦後ドル売りと円の買いが起き、似たような動向が見られました。
2008年:リーマンショック(サブプライムローン危機)
2008年には、リーマンショックと呼ばれる国際的な金融危機でも、NYダウの大暴落が起きました。
リーマンショックとは、前年の2007年に起きた「サブプライムローン危機」に端を発し、連鎖的に発生した世界規模の金融危機のことです。
アメリカでは、プライム層(優良顧客層)よりも返済能力で劣るサブプライム層(より下位の客層)にも住宅ローンの貸付を行う「サブプライムローン」が、2001年頃からさかんに販売されていました。サブプライム層へのローン貸付はリスクをはらむものであるにもかかわらず、証券業界や格付け会社の結託により、サブプライムローン周辺の経済はとても盤石で成長性に富むもののように演出されていました。
しかし、それにともなう住宅過剰供給、さらに2007年に表面化した住宅価格下落とともに、サブプライムローンは不良債権化、さらにサブプライムローンを元手とした金融商品の価値も地に落ちました。(住宅バブル崩壊)
サブプライムローンを利用して事業を大きく拡大していたために、住宅バブル崩壊のあおりをもろに食らったのが、証券会社の「リーマンブラザーズ」です。空前の規模の損失を抱えきれなかったリーマンブラザーズは倒産し、その関連企業への影響はもちろんのこと、米国政府の対応の遅れも災いして、米国経済全体に対し不安が広がり、世界的な金融危機へと発展しました。
このときNYダウは結局、2008年時点で史上最大となる777ドルもの暴落を起こしました。この暴落は世界規模の金融危機へと拡大し、日本では日経平均株価の暴落や、大手生保会社(大和生命保険)の倒産などを引き起こしています。
リーマンショックの原因は、金融企業も消費者も、中身も見ずに「うまい話」に乗っていたことが原因と言えます。また、米政府の対応が杜撰だったことも原因と言えるでしょう。事実、有名な投資家であるウォーレン・バフェット氏は、このような状況をかねてから警告して「危険だ」と発言していたといいます。
まとめ:NYダウや株価指標が暴落する原因
NYダウが過去に経験した大暴落のいくつかから、NYダウが暴落する原因について説明してきました。
これらの例を見てわかるのは、(1)顕在化した社会危機(米国の赤字拡大や、テロなど)に応じて大暴落が起きたケース、そして、(2)中身のない「うまい話」 に多くの人がのせられたケース(ITバブルやサブプライム住宅ローン危機など)の、おおまかに2つが見られるということです。
とくに、我々個人投資家が気をつけるべきは、ITバブルやサブプライムのような「うまい話」「一見バラ色に見える話」に不用意に乗ってしまわないようにすることです。
株価の動きは必ずランダムであり、「誰でも一夜で大儲け」できるような話には、必ず裏があります。その中身、たとえば
このような、一か八かにかける、あるいは「うまい話」でむやみに儲けようとすることは「投機」と呼び、着実な資産育成を目的とする「投資」とは明確に区別されます。
投機ではなく、根拠を持った「投資」を続ける
NYダウと同様な株式指標である日経平均株価も、これまでに暴落を経験したことがありますが、振り返ればその兆しを見つけることはできます。
本記事で紹介したような大きな暴落はおよそ10年前後ごとに起きるとされていますが、2017年現在はリーマンショックからもうすぐ10年が経過しようとしており、近く大きな動きがあっても不自然ではないと言えます。
なんらかの株価動向予測をよりどころにして、投機ではなく投資を着実に続けていくことが、とくに個人投資家にとっては重要です。
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