現在は「世界同時株高」と言われるほどで、世界の景気は比較的堅調に推移していると考えられています。しかし、日米では急激なほどの株高が発生し、近々調整が来るだろうとの見方が、日増しに強くなっています。
今後の日米の経済イベントは、ある意味市場コンセンサスが出揃っているといえますが、これから世界経済危機を呼ぶ可能性を考えれば、ひとつにはロシア財政の推移も見守る必要があります。
この記事では、過去にロシアが二度も経験したロシア経済危機を振り返りつつ、今後ロシア経済危機が起きれば世界経済にどのような影響を及ぼしうるか、それを起点に暴落が起きるのか、を考えます。
このページの目次
2つのロシア危機:概要と特徴
ロシアは、この数十年で二度の財政危機を経験しています。まず1998年、そして2014年の財政危機です。
それぞれに状況は異なりますが、いずれの危機でも重要な役割を担っているのが、ロシア経済が依存している「天然資源輸出」への世界的需要です。
世界の天然資源需要が低まれば、ロシアの歳入も低下します。あるいはその需要が保たれればロシアの体力はなんとか保たれるわけです。この点を軸に、2つの財政危機を見てみましょう。
1998年のロシア財政危機
まず最初に説明するのは、1998年のロシア財政危機です。
97年のアジア通貨危機がロシア財政を窮地に
このときロシアでは、ロシア通貨であるルーブルの国際価値がそれまでの半分程度にまで暴落し、また国際の債務不履行(国際の償還を5年延期した=デフォルト)が起きました。
そのきっかけになったのは、1997年に発生した、アジア通貨危機です。これにより世界景気がおおきく後退、ロシアの主要輸出品目は需要急落により価格大下落、ロシア財政をおおきく悪化させることとなりました。
対策講じるもルーブル半値で財政崩壊
傷口が広がるのを抑えようとロシアは、1998年8月17日、ルーブルの切り下げ、つまり対ドルで24.7%までのレート下落を容認します。これによってルーブルは急落します。
それにくわえて、民間の対外債務支払を90日間猶予する(モラトリアム)という決定も下しました。
これらにより、対ドルの取引不成立、あるいは全面的な為替取引の停止などが起き、それまで1ドルあたり8-9ルーブルだった相場が、1ドルあたり20ルーブル台へ、50%もの下落を記録しました。
ロシア危機から世界的経済危機へ
こうなると、ロシア資産と外国資産で裁定取引(同じ価値のあるものを2つの経路で売り買いし差益を得る取引)を行なっていた大手ヘッジファンドが経営危機に追い込まれます。
ヘッジファンドの危機はけっきょく世界為替相場の混乱を引き起こしました。当時のドル円相場は2日で14円以上の円高を記録したといいます。現在でいえば、いま113円のドル円が、二日で99円になった、というイメージです。
その後は比較的順調に回復
こうして大きな混乱を呼んだ98年のロシア財政危機ですが、その後のロシアは、原油需要が世界的に回復していくとともに、比較的順調に財政を立て直していきました。
というのも、こうした混乱にもかかわらず、ロシアの産業構造が破壊されるまでには至らなかったからです。
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2014年のロシア財政危機
しかしその後の2014年、ロシアは再び財政危機に見舞われます。こちらは、ウクライナ国の領土とみなされていたクリミアをロシアに編入したことに端を発する、ウクライナ騒乱がきっかけになったと考えられています。
ウクライナ騒乱で国際的信認が低下
14年3月、ロシアがクリミアを編入すると、欧米はロシアに対する経済制裁を発動、また国際的信任の低下からルーブル暴落、減価幅は50%近くに達しました。
ロシア国内では、これにより望まざるインフレが発生、同じ品物を、以前の2倍のお金を払わなければ買えなくなったといいます。
通貨安を看過できず、ロシアは政策金利をそれまでの10%から17%へと一気に引き上げる、通称「歴史的な利上げ」を行いました。これにより国際的なルーブル需要が喚起され、一定の効果をもたらしたと考えられます。
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止まぬ経済制裁も、回復へ向かうロシア
経済制裁はその後も続き、ロシアは厳しい環境の中をなんとか進んできましたが、2016年には、ついに回復路線へと向かいます。
財政回復へ向かうことができた要因としては、ロシアの財政がより慎重になったことが上げられます。例えば、資源輸出に頼るロシア財政を鑑み、連邦予算の歳出額が原油輸出収入の見積額を超えないようにする、などといった予算ルールがもうけられました。
これにより、ある格付け会社によるロシア国家に対する格付けは、2017年には以前の「安定的」から「ポジティブ」へと引き上げられるなど、国際的にも認知を高める結果となりました。
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三度目のロシア財政危機はあるか
さて、ロシアが今後ふたたび財政危機に見舞われる可能性はあるのでしょうか?
客観的に見ればふたたび危機が起きる可能性はゼロとは言えません。
というのも、過去の財政危機で共通して見られたポイントが、今でも変わっていないからです。
いまもロシアはある意味同じ状況にある
ひとつは、資源輸出に依存した財政です。世界経済が減退すれば、資源需要も減衰、ふたたびロシア財政が冷え込む結果となるでしょう。外的要因に左右されやすい体質が変わっていないということです。
もう一つは、ルーブル安を招きかねない要因がいまだ払拭されていないということです。具体的には、このところ大きなニュースが見られないとは言え、まだそこかしこでくすぶっていると考えられる地政学リスクです。ひとたびどこかで何かが起これば、ルーブル価値はさらに低下するでしょう。もちろん、いまだ続く経済制裁が更に強化されるというシナリオもありえないとは言えません。
もし三度目のロシア財政危機が起きたら・・・
このような状況から、なんらかの要因でロシアが再び財政危機に見舞われる可能性は、ゼロとはいえません。
例えば、。何らかの要因でルーブルが急落すれば、世界景気の堅調さに沿って、ロシアの資源輸出に追い風が吹く可能性も、なくはありません。
しかし、経済制裁がさらに強化されるような目が出れば、ロシアは窮地に追い込まれ、にわかに地政学リスクの高まりを生み、安全資産である円買いからの円高、および欧米との対立が緊張度を高めドル安、ひいては日本で続く景気回復にピリオドを打ち、大暴落が起きる可能性も、否定はできないでしょう。
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