【3分でわかる】なぜ株高なのに円高なの?(くわしい解説付)

世界の企業業績は上向いている(=「ファンダメンタルズは良好」)と言われています。そうしてリスクオンムードの株高になると、決まってドル円は円安方向に進む・・・はずが、なぜか円高にはずみがつき、先日は105円台にまで進みました。

この「株高・円高」現象、どうしてこんなことが起きているのか、理由がよくわからない人が大半ではないでしょうか。

でも実は、その理由はとても単純です。その理由は、株高で生じている円安圧力よりも、さらに強い「ドル安圧力」が生じているからです。

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【3分でわかる】「株高・円高」のワケ

まずは、できるだけかんたんに説明してみます。
この「株高・円高」の一番の原因は、現在の米政策です。

「企業は黒字、国は赤字」の米政策

2017年末、トランプの「米税制改革」が世界中で注目されましたね。
あれは、大型減税で景気浮揚を狙った政策です。

つまり、「米国の財政(税収)は赤字でいいから、米企業を黒字に!」というわけです。

(大型減税以外でも、トランプ政策の多くは、国の身銭を切って企業業績を伸ばそう、というものです。)

米企業が黒字→株高

黒字観測の米企業の株は、投資家に買われ、かくして米株高が加速します。

すると、米株高にひっぱられて、日本も株高トレンドに入ります。

米国が赤字→ドル安

しかし、米「企業」ではなくて米「国」の方は、トランプ減税で赤字なわけですから、米ドルはこれから(一時的にせよ)減価しそうですね。

そんな懸念を持った人の多くは、今持っているドルを他の通貨と交換しようと考えます。

「ドル売り、その他の通貨買い」、というわけです。

ドル以外の通貨が軒並み買われ、全面ドル安

こうして、2017年の終わり頃から、

「ドルを売ってユーロを買う」
「ドルを売って円を買う」
「ドルを売ってその他の通貨を買う・・・」

という流れが強まりました。

つまり、あらゆる通貨に換金する形で、全面的にドルが売られたのです(全面ドル安)。

この全面ドル売りの勢いは強く、株高(リスクオン)時に生じる円売り圧力をもしのぐほどでした。

かくして、ドル売り/円買い勢力が、ドル買い/円売り勢力よりも大きくなって、円高が発生しました。これが現在の「株高・円高」の理由です。

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【くわしい解説】ドル主導円高の構造

以上の説明が、今の「株高・円高」の大筋のイメージですが、中には「そんな単純な話なの?」と腑に落ちない方もいたでしょう。

それでは次に、もっと踏み込んで解説してみます。

トランプ政権のやってきたこと

米トランプ政権は、2017年末の連日のNYダウ史上高値更新など、株式相場での成果を声高に訴えています。しかしそれは、「身を切る政策」、つまり、大型減税による税収減など、赤字予算を組んでまで実現した成果でもあります。

2017年末、トランプは米税制改革を通しました。この減税への期待で、株価は未曾有の伸びを見せました。

さらに2018年には、インフラ投資や国防費増といった政策も実現しつつあります。

こうした政策は、基本的に、国がお金を使い(=税収減らす、発注する)、企業がお金を増やす(=減税される、受注する)という政策です。

国の支出は増えるわけで、予算は赤字予算が組まれています。

米の赤字予算と長期金利上昇

この、税収減・支出増による赤字は、米国債の発行によって補てんされることになります。

そうなると、国債はおいおい流通量が増え、需給がだぶつくでしょう。この観測から、2017年末から国債の売りが増え、価格が下がり、長期金利が上昇しました。

一般的には、長期金利の上昇は「みんなが安全資産の国債ではなくリスク資産の株などを買ったから」とも考えられます。

しかし今回は、単に「国債をいらないと思う人が増えたから」と言えます。というのも、米財政が赤字なわけですから、米国債に過度な期待を持つ人は当然減るわけです。

つまり、今回の長期金利上昇は、米国の財政悪化を映し出した「よくない長期金利上昇」ととらえた人が多かったわけです。
(2018年2月5日の株価急落も、この不安が一時頂点に達した結果の一つ、と考えて良いでしょう。)

「名目金利」が上がっても「実質金利」はそうでもない

それでも、単純に米長期国債が安くて金利が高くなったら、今が買いどきなのでは?と思う人も多いのではないでしょうか。

実はここからが少々ややこしいところです。
その秘密は、米国のインフレ率にあります。

米国は、年間1~2%程度のインフレを実現しています。これが続けば、いま100ドルで買えるものが、いずれは、例えば110ドル出さないと買えなくなる日が来ます。

となると、長期国債の金利が少々上昇しても、その利幅はインフレによる物価上昇で相殺されます。

たとえば、金利上昇で国債100ドルあたり+3ドル利子が出たとしても、インフレで100ドルの商品が+10ドル値上がりしていたら、実質その商品が買えなくなってしまうわけです。

このように、名目上の長期金利(名目金利)にインフレ率を加味した金利を、実質金利と呼びます。

値下がりし金利上昇しているとはいえ、今の米長期国債は、インフレ率を加味した実質金利を考えると、うまみに欠けるというわけです。

価格が安くなっている(金利が上昇している)のに米長期国債が買われないのは、そうした理由があります。

また、米国債を買いたい人がいないということは、そのときに必要になる米ドルを買いたいと思う人も少ないということです。となると、こちらも全面ドル安の原因として考えられることになります。

ドル売り第一波:資源国通貨・ユーロ買い

トランプ政権は、2017年11月~12月に、米税制改革を通しました。このとき生じたのが、(税収減に対する)ドル売り圧力の第一波です。

このとき、まず買われたのが、金利が高い新興国や資源国の通貨です。

例えば南アフリカのランドは、2017年11月には1ランド=0.069ドルだったのが、その後のドル売りランド買いにより、2018年1月までには1ランド=0.084ドルまで上昇しています。実に+21%もの南アランド高(/ドル安)をつけたことになります。

また、ドル売り圧力はその後、ユーロ買いにも向かいました。というのも、ユーロは2019年には量的緩和の縮小に向かうとの決定があり、財政正常化が意識されていたからです。

こちらは2017年12月に1ユーロ=1.17ドルだったものが、2018年1月には1ユーロ=1.24ドルと、+6%ほどユーロ高(/ドル安)となっています。

と、こうして振り返ると、今回の「全面ドル安」では、増価率の高い通貨から順に買われていたこともわかりますね。

ドル売り第二波:日本円・スイスフラン買い

南アランドやユーロが買い一巡し、割高感が出てくると、今度は別の通貨に買いが入ります。それは、比較的利回りが低いとはいえ、安定性や短期~中期的観測でドルよりはうまみがある、日本円やスイス・フランです。

なかでも日本円は出遅れており、対ドルで値頃感がありました。
例えば、対ドルの増加率を南アランドと比べてみると、ドル・南アランドレートが昨年末比+21%となった2018年1月、ドル・円は109円ほどで、まだ昨年末比+3~4%ほどしか増価していませんでした。南アランドに買いが入っても、日本円にはまだ買いがそれほど入っておらず、割高感がさほどでもなかったのです。

また、日本円を買う理由としてもう一つ、日本のインフレ率が低水準(=物価があまり上がらない)という点があります。とくにアメリカと比べると、インフレ率には雲泥の差があると言えます。例えば17年末の米インフレ率は年2.1%ですが、日本はなんと0.4%弱です。

となると、日本の名目金利が低くても、インフレ率を加味した実質金利で見れば、日本円には買いメリットがあることになります。インフレ率が低く物価が上がりにくいからです。

このような状況で、「ドル売り第二波」が日本円などに向かいました。その結果、先日2月16日のドル円は、105円70銭台まで円高に振れました。これは、昨年末のドル円113円時から+7%以上の円高(/ドル安)となります。そのちょっと前の時期(つまり、ドル売り第一波のとき)でユーロがつけた対ドルユーロ高に匹敵する増価率です。

なお、「ドル売り第二波」で円と同じように買われたスイスフランも、昨年12月から本年1月までは+4%ほどのフラン高(/ドル安)だったのが、この2月で+7%をつけています。

外為は「ドル主導」、という現実

このように見てみると、いかに円レートがドル主導(もしくは米経済主導)で動いているかが、よくわかるはずです。

円だけではなく、ユーロも、フランも、新興国や資源国の通貨もそうです。あるいは、ここでは取り上げませんでしたが、中国人民元などほかの通貨もそうです。いま全面ドル安で減価しているとはいえ、世界経済はドルを欠いては成立し得ないのです。米ドルは、世界の基軸通貨として、諸他国通貨をその影響下においています。

ドル次第で簡単に崩れる「株高・円安」構造

したがって、よく知られる「株高なら円安」というスキームは、米ドルの動向次第でかんたんに崩れます。

いまの「株高なのに円高」トレンドは、円、あるいは日本の状況が原因で起きているわけではないのです。本当は、世界的な「株高・ドル安」現象の余波の一つにすぎないのです。

こう考えると、このところの「全面ドル安」が解消されない限り、円高(あるいはほかの通貨高)は解消されない、と考えられます。

米国の意思を見据える

ドル全面安のような状況を、日本だけの金融政策でどうこうするのは、きわめて難しいと考えられます。たとえば日銀あるいは日本政府が独自に対策を講じたとしても、ドル円レートに及ぼす影響は限定的と言わざるを得ないでしょう。

それよりも、米政策、すなわち米国が自国経済および世界経済をどのように誘導しようと考えているのかという意思を見据えることが、ドル円動向把握には欠かせないものとなります。

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