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ライブドアショックに学ぶ/株価暴落のサインとは?

世界金融危機を引き起こしたリーマン・ショックに先んずること二年前、日本では、もう一つの大きな経済危機が起こっていました。2006年に起こった「ライブドアショック」です。

はや10年以上たった現在では、このことを知らない個人投資家すらいるかもしれません。しかし、当時市場に参入していた投資家には、リーマン・ショックと同じほど忘れられない出来事だったはずです。

ライブドア・ショックとは、何が原因で、どんな結果を引き起こしたのでしょうか?そして、高値相場にある現在、同じような原因で経済危機が起こるとしたら、それをどのように乗り切ればよいのでしょうか?

事件までの経緯:過熱市場とライブドアの蜜月期

2005年7月以降、日本国内では、バブル崩壊後では初となる株価上昇が起きていました。

市場には新規の個人投資家が大量に流入し、それまでは投資情報など掲載することのないスポーツ新聞などでも、株式投資の活況が伝えられるとともに、バブル景気が再来したかのような煽り文句が踊りました。

テレビでも、株式に初めて手を出す芸能人が「いくら儲けられるか」などといった特集が組まれるほど、投資の参入障壁は低くなり、初心者投資家が数多く生まれました。

「新しい時代」の急伸企業、ライブドア

そんななか、個人投資家から注目を集めていた企業のひとつが、ライブドアです。

ライブドアは、20世紀末期にインターネット広告・インフラ事業から立ち上がり、2005年頃にはラジオ放送局の筆頭株主となるまで急成長した、いわば新しいインターネット時代の寵児でした。

その企業成長性に加え、株式分割を繰り返したことで実現した、1株数百円台という株価も、個人投資家を引き寄せる魅力となっていました。いわば、ライブドアは「それまで投資をしたことのない個人投資家」に利益をくれる「新しい時代の企業/銘柄」として映っていたようです。

ライブドアショックの経緯(2006年)

そんななかの2006年1月16日、ライブドア本社、そして代表取締役である堀江貴文氏の自宅へ、東京地検特捜部の家宅捜査が入りました。

なお、伝えられるところによると、翌17日には、ライブドアとリーマン・ブラザーズがソニー買収を期してのキックオフミーティングが予定されていたといいます。つまり、堀江氏らライブドア上層部には寝耳に水の事態だったようです。

この日を境に、日本の株式市場は、のちに「ライブドアショック」と名付けられる歴史的な経済危機へとなだれ込みました。

2006年1月16日:東京地検立ち入り捜査

東京地検の捜査が入ったのは、ライブドアに証券取引法違反の疑いが持たれたからでした。

具体的には、ライブドアが決算を粉飾し、2004年の決算において、前年比経常利益が本来-120%の赤字であったところを、+300%の黒字として虚偽に発表していたことが問題となりました。

当時、世間から注目をあびていたライブドア、および堀江氏の家宅捜査は、メディアで連日スキャンダラスに報じられ、社会現象となりました。

2006年1月17日:ライブドア株急落が市場全体へ波及

捜査から一夜明けた1月17日、当時10億株を超えて取引されていたライブドア関連の銘柄(ライブドアのほか、セシール、ターボリナックスなど7社)は、売り注文が殺到しストップ安気配となりました。

また、ライブドア株が時価総額の10%ほどを支えていた東証マザーズ市場株価は、前日比-11%を超える大幅下落を記録しました。

さらに、ライブドア株を信用取引の担保としては「価値ゼロ」とみなす通告がマネックス証券から出され、信用取引で追証(おいしょう:信用取引を続けるため証券会社に追加で現金を積むこと)が必要になった投資家たちが、現金調達のため他の株を売るなどの動きが大きくなりました。

さらには狼狽売りなども重なり、ライブドア株の暴落は株式市場全体に波及、この日の日経平均株価は-462円(-2.84%)と急落で引けました。

2006年1月18日以降:ライブドア上場廃止、堀江氏収監

さらに明けた1月18日株式市場全体には大量の注文が殺到、東証の売買システムの約定件数キャパシティを超える寸前まで達し、全銘柄が取引停止されるという異例の状況に至りました。この日ライブドア株はふたたびストップ安、日経平均は18日でさらに-464円(-2.94%)の下落を示しました。

そのまま大幅下落ののち1月20日にはようやく株式市場が平静を取り戻しました。ライブドア株はセシールを除いた6銘柄が下落を続けていましたが、日経平均は反騰を見せ、またマザーズ指数も反発しました。

その後、2006年3月にライブドアおよび関連の株は上場廃止、2007年には堀江氏が懲役2年6ヶ月の実刑判決(即日控訴)、そして日経平均はじょじょに回復したものの2008年のリーマン・ショックで世界金融危機へなだれ込み、再び長い雌伏の時期に入ることになります。

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ライブドアショック見る「過熱市場」の危うさ

さて、ライブドアショックが示しているのは、過熱しすぎた市場がどれだけ危ういものであるか、ということのように思われます。

なぜこれほど大きなショックが起きたのか

後世になると、ライブドアの粉飾事件自体については、過去の判例に比べても、粉飾額の大きいものではなかったのでは、という声が出てきています。

また、堀江氏のキャラクターから「ワルモノ堀江氏の悪乗りが原因」というていで語られることもありましたが、昨今では、堀江氏よりも社内の別の人物の責任がより重かったのでは、との認識もあります。

つまり、ライブドア事件が市場全体をゆるがす経済危機へと発展したのは、ライブドアの行なったことの規模の大きさもさることながら、それよりも、当時の市場過熱による、著しい「ショック耐性のなさ」が原因として大きいのではないか、ということです。

「第二のライブドア」は見当たらないが・・・

立ち返って現在の日本株式市場を見てみると、いざなぎ景気を超えるとされる空前の長期景気回復に、市場は活況を呈しています。

日銀の金融緩和政策に加え、様々な節目に全時価総額の60%を超えると言われる海外投資家の投資マネーが流入してくることで、日経平均株価はいま史上まれに見る強気相場を形成しています。

しかし、この高値トレンドには実質経済の「支え」が欠けている、という分析も、ときに聞こえてきます。いくら景気指標が上向いていても国民の実質経済は豊かになっていない、という統計もあり、現在の株価上昇が「いきすぎた過熱」なのではないか、という不安は、どうにも拭いきれません。

今、市場の過熱を煽っているものがあるとしたら、それはライブドアのような「新時代の先端企業」のようなものではなく、ぼんやりと形成されてきた日本経済への、ぬるま湯のような期待、なのではないかとも思われます。

期待の「ぬるま湯」で膨らんだ水風船、いつ割れる?

そのぬるま湯のような期待が、水風船のように株価を膨らませているのが、現在の状況と考えることもできるでしょう。その水風船が、何かを「針」にして一気に破裂するときが来れば、そのときは確実に株価暴落につながるでしょう。

世界情勢不安なのか、企業業績なのか、地政学的リスクなのか・・・ 「針」が何になるのかはまだわかりませんが、個人投資家は今こそ、心に備えを持ち、気を引き締めて資産運用に当たるべきです。

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1 個のコメント

  • バブル経済再来が現実味を帯びています。只、以前とは違い、健全なバブル経済に成り得るのです。