2020年末にEUと通商合意を果たし、名実ともEU離脱を実現した英国ですが、2021年には、昨年から続くコロナ禍の克服や、EU離脱後の通商環境の構築など、いぜん大きな課題が英経済に立ちはだかっています。
こうしたなか、2021年のポンド円予想はどのようなものとなるでしょうか?
ここ数年のポンド円主要レンジと、今後の方向性を決める重要なファンダメンタルズを確認しながら、今年のポンド円予想を行います。
2021年はレンジブレイクの可能性が焦点
ポンド円の年足チャートを確認すると、2017年以降のポンド円には、大きな上昇トレンドや下降トレンドが見られず、おおむね125円〜155円のレンジ相場となっています。
また、ローソク足の実体(ヒゲを除いた部分)だけに注目すると、145円前後を行き来する狭い値幅になっており、主な価格帯はより狭いものとなっていることがわかります。
これをふまえて、今年2021年のポンド円予想は、近年同様125円〜155円のレンジを小動きに推移するのか、それともこのレンジをブレイクするのかが焦点となりそうです。
そして、2021年のポンド円予想の材料として、次のようなものが注目となります。
- コロナワクチン接種政策の成否
- EU離脱後の対外貿易状況
- マイナス金利導入の是非
コロナワクチン接種政策の成否
2021年1月現在、新型コロナ感染拡大に歯止めがかかっていない状況ながら、英国は先進国の先陣を切って新型コロナワクチンの大規模接種を開始した国であり、接種率も着実に増加しています。
同じく早期からワクチン大規模接種を行ってきたイスラエルでは、すでに国民のワクチン接種率が20%超に達しており、感染拡大にも歯止めのかかる兆しが見られていると報じられています。
イスラエルのケースを参考にすれば、英国でも2021年内にワクチン接種の効果が顕在化するとみられます。その場合、英国は他国にさきがけての経済活動正常化を果たすことができると考えられ、早期経済回復への期待感から英ポンド買いに勢いがつきそうです。
この際は、2017年以降のレンジ上限である155円を上方ブレイクする可能性が強くなります。状況によっては、2014~2015年の主要レンジであった190円付近を目指すことも考えられそうです。
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EU離脱後の対外貿易状況
また、昨年末にようやく実質的なEU離脱を果たしたあとで、英国の対外貿易がどのような水準となるのか、という点にも注目が集まります。
現在の英国はコロナ禍の対応に忙殺されている状態ながら、コロナ禍が落ち着いたあと、英国は本格的に英経済の立て直しへ取り組むことになるでしょう。
EU離脱によってEUの規制から縛られることがなくなり、さらに昨年末のEUとの通商合意によって最悪の事態(ハードブレグジット)も回避した状況下、さらに米国など主要相手国と貿易協定を締結し活発な貿易が行われれば、英経済発展への期待感が大きく上昇し、こちらも英ポンド買いに勢いがつく要因となります。
ただ一方では、他国との貿易協定締結が遅延するなどして、EUに依存してきたこれまでの英国経済からの脱却が果たされない場合は、じわじわと経済的体力が消耗し見通しが悪化、ポンド円レートがレンジ下限の125円を下方ブレイクする可能性も否定はできません。
もしレンジ下方ブレイクとなった場合、下値メドは2011~2012年の安値近辺である120円前後となりそうです。ただし、きつい下げでこの近辺を下抜け、さらに2011年安値116円も下抜けた場合は、さらに大幅に下値を広げる可能性も警戒されます。
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マイナス金利導入の是非
そして、もう一つ注目すべき点が、英国でのマイナス金利導入に関する見通しです。
通貨安政策が肯定的にとらえられる日本や米国とは違って、英国は自国の通貨安政策に対して否定的であり、英ポンド安につながるマイナス金利導入政策に対して積極的ではありませんでした。
しかし、コロナ禍が長期化する中で、BOE(イングランド中央銀行)はついにマイナス金利導入についての議論を行うに至っており、今後の英経済の推移によってはマイナス金利導入が現実となる可能性もあります。
自国通貨安につながるマイナス金利政策が導入されれば、それ以降ポンドには継続的な下落圧力がかかることになります。この場合、レンジ上方ブレイクは困難となり、一方でレンジ下限125円の下方ブレイクの公算が高まるでしょう。
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コロナ禍の早期克服が鍵
激しい値動きのイメージがあるポンド円ですが、年足チャートのとおり、2017年以降はレンジ形成でおとなしい値動きに終始しています。
しかし、EUの実質的離脱を果たし、またワクチン接種拡大による早期のコロナ禍克服が期待される2021年は、これまでのレンジを上下いずれかにブレイクする公算が高いと言えます。
最も前向きな予想としては、ワクチン接種拡大が奏功して早期の経済活動回復期待が上昇、さらに米国などとの通商協定締結で貿易も活性化し、リスク通過でポンド円がレンジ上方ブレイクとなるシナリオです。この際の上値メドは190円前後も視野に入ってきます。
一方で、なんらかの理由でコロナ禍克服が遅延、さらに他国との通商交渉も難航すれば、BOEがマイナス金利導入に踏み込む公算も高まることになり、ポンド円はレンジ下方ブレイク、というシナリオが現実味を帯びてきます。この際の下値メドは120円前後というところですが、場合によってはさらに下値を拡大する展開も警戒されます。
レンジ上方ブレイクと下方ブレイクのいずれのシナリオをたどるかは、まずワクチン接種によるコロナ禍克服をどれだけ早期に果たすことができるかがポイントとなりそうです。
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