2021年のドル円は、2017年から続く100~115円間のレンジの上限付近で2021年を終えることとなりました。来年は、このレンジ上限からどのように推移していくのでしょうか。
2022年のドル円について、テクニカル的要件と、ファンダメンタルズ的に注目すべき買い材料・売り材料を取り上げるとともに、それぞれの材料を勘案した値動きの予想を行います。
このページの目次
テクニカル:レンジ上方ブレイクが示唆される
まず2021年までのレート推移からテクニカル的な状況を確認します。
2021年のドル円は年足で見ると、2015年以来で七年ぶりの陽線。しかもローソク実体は2018~2020年の3年分の下げを取り戻す「はらみ足」となっており、強い上昇圧力の強い状態と言えます。
・ドル円の年足チャート(チャート画像はTradingView、以下同様)
次に月足チャートを見ると、2017年以降はおおむね100~115円間のレンジ相場を形成。2021年12月は114円台で終え、レンジの上限まであと一歩の水準となっています。
・ドル円の月足チャート
なお月足チャートを見ると、2021年11月には一度115円に乗せたのち、まもなく押し戻される場面が見られています。テクニカル的には、サポート&レジスタンス(サポレジ)線に3度目のタッチ後ブレイクするケースが多く見られますが、この2021年11月の115円タッチはサポレジに対する3度目のタッチと見なすことができ、今後上方ブレイクに向かう可能性が意識されます。
ファンダメンタルズ:金融引締めの影響に注目
次に、ファンダメンタルズ面を見てみましょう。2022年のドル円に影響を与える可能性のある代表的な材料としては、下記が考えられます。
買い材料:複数回の利上げによるドル高観測
・米国でのインフレ長期化によるドル高
買い材料としては、2022年の米国経済の大きなテーマとなるインフレが上げられます。
2021年12月のFOMCでFRBはインフレ抑制のための利上げ方向へ進むことを決定しました。基本的には、利上げ方針はドル高へと波及しやすい材料となります。2022年にFRBが複数回の利上げを行い、早い時点でインフレが沈静化できれば、株式市場を動揺させずに、安定的なドル高が期待できることになります。
売り材料:金融引き締めと中間選挙リスク
・金融引き締めによる株安懸念
・米中間選挙での民主党大敗観測
一方で売り材料としては、まずFOMCで金融引き締めを契機とする株安が懸念されます。
インフレ対策のためのテーパリング(金融緩和縮小)加速や利上げは、基本的にはドル高政策ではあるものの、政策の影響が出すぎると、株式市場の動揺を招き、結果、為替市場でリスク回避のドル売りが進む可能性があります。
また、2022年11月に行われる米中間選挙もリスクとなりそうです。
2022年11月には、バイデン政権への評価が顕在化する米中間選挙が行われます。バイデン政権への米国民からの評価はまちまちとなっており、しばしば支持率の低下が注目される状況のなか、この中間選挙で与党民主党が大敗した場合、バイデン政権での政策実行力の大幅な低下が嫌気され、ドル安が進む可能性があります。
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上昇シナリオ:利上げ支えに126円付近までドル買い余地
テクニカル的には、ドル円は2021年の年足で上昇圧力の強い陽線を形成しており、更にサポレジの115円の3度目のタッチにより上方ブレイクに至る可能性があります。この場合、複数回の利上げ観測というファンダメンタルズもドル買いの支えとなるでしょう。
ドル円がこのまま上昇した場合のポイントは、118.6円と125.85円の抵抗帯です。ドル円は2016年12月の118.6円が100~115円間のレンジ形成直前の抵抗帯として存在しています。よってレンジを上方ブレイクの場合も、それ程上昇せずに118.6円で上昇がストップする可能性があります。
ただし長く続いた100~115円間のレンジをブレイクすることで強気観測が加速し、118.6円をアッサリ超える可能性もあります。その場合、次の抵抗帯は2015年の125.85円です。
2021年のドル円は年間で見ると、安値から高値まで約13円上昇しています。これを目安に考えると、2022年にも13円上昇すると想定すれば、2021年12月半ばの113円台半ばを安値(起点)とした場合は、高値が126円になります。この見方では、2022年の125円到達の可能性は十分にあります。
ただし、心理的節目かつ過去に高安メドの集まる120円付近を超えられるかどうかは注意すべきかもしれません。118.6円を超えた場合でも、ファンダメンタルズ的になんらかの重荷が出てきた場合や、騰勢がそれほどでない場合は、ひとまずこの水準を意識する必要がありそうです。
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下落シナリオ:2022年のドル円、下落の場合
月足で見るとドル円は100~115円間でレンジを形成しており、2022年にドル円が下落する場合、まずは大きな節目価格でありレンジの下限でもある100円まで下落の可能性があります。
とくに注意すべきは、米利上げによる株式市場の動揺がリスク回避の動きに波及するケースでしょう。2021年末にかけても利上げ観測が株安につながった場面が見られており、来年の利上げ実施で株売りが本格化した場合などは、ドル円が一気にレンジ下限まで下げる展開も考えられます。
さらに100円を割れるとその下には目立った抵抗帯はなく、2011年の安値75.56円まで一気に下落する可能性もあることに注意が必要です。上記の利上げ・株安に加え、11月の中間選挙で民主党政権が大敗してバイデン政権の政策実行力が大幅に低下した場合などは、100円割れが視野に入ってくるかもしれません。
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レンジ上方ブレイクなるか 利上げ後の市場心理が鍵
2021年のドル円は、年足での陽線「つつみ足」が象徴するように、大きく円安が進んだ1年となりました。
とはいえそれでも、レンジは既存の100~115円間という範囲に留まっています。現行水準の114円台というレンジ上限から、2022年にどちらの方向へ推移していくのか、行方が注目される状況です。
大勢としては、米利上げ観測を支えにレンジ上方ブレイクのシナリオが意識されると言えます。とはいえレンジブレイクにはそれなりのエネルギーを必要とするため、レンジ上限で跳ね返される展開となれば、株価の動揺などのリスクを重荷にレンジ下限割れの可能性もあることに十分警戒が必要でしょう。
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