先週のトルコリラ円は、上値の重たい中で、1トルコリラ=22.9~23.7円と、比較的狭いレンジとはいえ堅調な推移を示しました。
このような落ち着いた動きとなった原因としては、先々週までの新政権人事への懸念が一巡したこと、またこの2年間発効していた非常事態宣言が19日に解除された(憲法の規定により、自動的に失効したのですが)ことなどがあります。
冷静に見てみると、非常事態宣言を解除した後でも、市民の自由を制限するような内容の法律が準備されていることや、大統領権限の強さを考えると、以前と実質的にはさして変化がないとも言えるのですが、それでも、非常事態宣言の解除というイベントが目先の安心感につながった効果は大きいと言えるでしょう。
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今週のイベント:24日に政策金利発表
今週の大きな経済イベントとしては、24日の政策金利発表が控えています。こちらは、日本時間で24日の20:00頃が予定されています。
予想では、現在の政策金利である17.75%から、18.75~19%(+1%~+1.25%)へ引き上げられるとの見方が強くなっています。
政策金利への上昇圧力と下落圧力
トルコリラの政策金利を考えるには、まずトルコのインフレ状況を並べて考える必要があります。
インフレ率の現状として、公式にはトルコの6月消費者物価指数(CPI)は15%超と発表されています。しかし、食品など生活に身近なものだけの価格に注目した場合のインフレ率は年25%に達している、との見解もあります。
これをふまえて政策金利を見てみると、市場見通し上限の19%はおろか、20%を超えても、実質的なインフレ率とのバランスは崩れておらず、問題はない、と言うこともできます。
もちろん、金利上昇は景気冷え込みにつながる可能性もはらんでいます。そのため、エルドアン政権はそれを懸念し、中銀の金融政策へ介入して利下げ圧力をかけようとしているわけです。
このように、トルコの政策金利の見通しは、インフレ状況を反映した上昇圧力と、エルドアン政権の介入による下落の可能性とが、綱引きをしている状態です。
エルドアンの金利介入は当面行われない?
ただ、いまのところ、懸念されていたエルドアン政権の中銀への介入は見られておらず、利上げが抑制される可能性は低いと言えます。
となると、市場見通し通りの利上げ幅となった場合、トルコのインフレは抑制方向へ向かい、トルコリラ円の大きな動きにはつながらないと思われます。
しかし、もし上げ幅が市場見通しを下回った場合、つまり0.75%以下にとどまった場合は、インフレ改善期待が後退となり、失望した市場でトルコリラ売りが出ると考えられます。
その他の要素:新政権人事問題
その他の要素としては、先日のシムシェキ経済担当大臣の辞任、またそれにかわるエルドアン大統領の娘婿であるアルバイラク氏の就任によって、市場は不安感から下げで反応しました。
この問題が今度どのように影響してくるかは全くの未知数であり、何らかの動きが出れば相場が振り回されるような不確定要因であると言えます。
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まずは政策金利を注視すること
表面的な変化とはいえ非常事態宣言が解除されたこと、またISの勢力が弱まってきていること、トルコ国内の失業率改善など、目先のプラス要素も出てきています。
さらに、ファンダメンタルズが固まってきていることも踏まえると、中長期的には相変わらず先高感があります。
今週の見通しでいうと、まずは政策金利の行くさきを見据える必要があります。市場予想を下回るかどうかが、大きなカギと言えるでしょう。