英ポンドは現在、EUとのブレグジット通商交渉の難航を重しに、強い売り圧力がかかっています。
通商交渉がまとまらないまま「合意なき離脱」を迎えた場合、英国とEUはいずれも大きな困難に直面する可能性がありますが、この場合の英ポンドはどのような展開となるのでしょうか?
ブレグジット問題がたどる可能性のあるシナリオと、そのシナリオごとのポンド円の動きを予想します。
このページの目次
10月末までの合意なるか
2020年9月現在、すでに英国はEUを「離脱済み」です。しかし、通商交渉がまとまっていないことから、経済的な条件は現在も、英国とEU加盟諸国は同じ状況に据え置かれています。
この通商交渉の合意期限として設定されているのが、2020年10月末です。そこまでの合意を目指して英国とEUは、関税などの条件について通商協議を行っていますが、現在も「全くと言っていいほど」進展は見られていません。
考えられるシナリオ
もし期限までに合意ができれば、来年からは、合意内容に基づいて、EUと英国の間で新しい通商関係が構築される見通しです。しかし期限までに合意が果たせなければ、双方が大きな困難に直面する可能性のある「合意なき離脱」(≒ハードブレグジット)を迎えることになります。
合意なき離脱に至った場合は、英ポンドには強い下押し圧力がかかりそうです。一方、期限までに合意ができれば(≒ソフトブレグジット)、英ポンドの売り圧力も大きく和らぎそうですが、合意内容によってはリスク払しょくに至らない可能性もあり、静観はできません。
ポンド円レンジとチャートパターン予想
次に、足元の状況を整理しつつ、ブレグジット後の英ポンドの動きを考えてみます。
ポンド円レンジ概況
このところのポンド円は130 – 150周辺のレンジ相場ですが、より長い数年スパンで見ると、124 – 156付近までレンジが広がることがわかります。
レンジ安値124円は、2016年のEU離脱国民投票後の安値124.78や、2020年のコロナショック時安値123.99を意識した支持帯(サポート)となります。
またレンジ高値156円は、2016年安値からの戻り高値156.60を抵抗線(レジスタンス)として意識したものとなります。
レンジを意識した3つのチャートパターン
このレンジを意識するならば、ブレグジット後のポンド円予想としては、次の3つのチャートパターンが考えられそうです。
1. 下方ブレイク、124円割れ (↓)
2. 上方ブレイク、156円越え (↑)
3. 現行レンジ維持、124 – 156レンジ継続
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合意なき離脱なら124円割れ意識
英国とEUの通商交渉が不調のまま合意期限を迎えた場合は、合意なき離脱が決定となり、ポンド円は売りが加速 (↓) しそうです。
この2020年9月以降もポンド円は下落トレンドにありますが、合意なき離脱確定となると大幅なレート急落が予想され、まずはレンジ下限である124円が下値メドとして意識されることになりそうです。
124円割れの後は116円が下値メド
さらに124円を明確に下抜けた場合は、2011年~2012年の安値116円台が次の支持帯となりそうです。
124円から116円までは約8円と大きなギャップがありますが、合意なき離脱による見通し不透明感の強まりは相当なものと考えられ、116円到達のうえ、さらに116円を下抜ける可能性も警戒されます。
116円より下の水準は、1994年以降経験されていないレベルであることから、116円割れまで下落した場合は、その次の下値メドは予想しにくい状況です。
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合意達成ならレンジ高値156.60意識
一方、英国とEUとの通商協議が期限内に合意に至れば、見通し不透明感の払しょくにより、ポンド円急騰の可能性があります。
2016年のEU離脱国民投票より以降では、ポンド円のレンジ高値は156.60となっており、合意達成の場合はこの水準が上値メドとして意識されそうです。
合意達成の時点で、その他に英ポンドの重荷となる特段の材料がなければ、156.60を上抜けるポンド円の急騰も考えられます。
上値拡大阻む重荷も
ただし、合意達成までにポンド円レートが材料織り込み済みとなっていた場合は、合意確定によって上昇することはあっても、レンジ高値156.60を明確に上抜ける展開にはならない可能性があります。
また現在、英国では冬へ向け新型コロナ感染が再拡大している状況で、経済活動のシャットアウト再開の可能性も視野に入れつつ、景気見通しには不安が立ち込めている状況です。こちらも含めれば、合意達成でも、高値156.60を明確に上抜ける展開はやや考えにくいかもしれません。
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まとめ
124円は重要な下値メドであり、合意なき離脱に至った際にこの水準を割れるかどうかは、大きなポイントになります。
合意なき離脱ののちに、この水準を下抜け、さらに116円も下抜ける展開となれば、ポンド円はある意味で、市場が経験していない新しい局面を迎えると言えます。
ただ、昨年の離脱交渉の際に、ジョンソン英首相が急遽妥結合意を決断した例のように、今回もジョンソン首相の鶴の一声による急転直下の合意が果たされることも考えられます。そうなった場合、合意の可能性をまだ織り込んでいないポンド円が急騰し、高値メド156.60付近もしくはその上まで上伸する展開もありえると言えます。
どういったシナリオにせよ、英国とEUの通商協議の交渉期限とされる10月末をはさんで、ポンド円は大きな波乱を迎える可能性があります。それまでは、ポンド円取引の際には、通商協議の状況を押さえておく必要がありそうです。
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