2018年2月5日(日本時間6日)、米株式相場できわめて大きな株価下落が起きました。特に注目されたのが、NYダウが記録した下落幅(前日比)が史上最大であったことです。
そこで、今回のダウ下落幅が、過去データと比較してどれほど大きなものであったのか、ランキングを作成し、一覧で見てみようと思います。
また、過去に発生した歴史的暴落と比較した場合、今回の急落(2018年急落)がどのように見えてくるかも、検証してみたいと思います。
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今回の急落(2018年急落)の概要
2018年2月、米長期金利(米10年物国債利回り)の上昇、またVIX(恐怖指数)上昇が引き金となって、主要な米株価指数が軒並み大幅下落しました。
そのなかでも、特に大きく取り上げられたのが、前取引日比終値が1,175.21ドル安となった、NYダウ(ダウ工業株30種平均)でした。
これはNYダウ史上で最も大きな下落幅であり、世界中のメディアはこぞって「史上最大の下落が起きた」と報じました。
それに危機感をつのらせた米株式市場は、その後2月8日(日本時間9日)に再び急落、前日1,033ドル安と、最大下落幅だった5日に続く史上第2位の大幅下落を記録しました。
この一週間でNYダウの下落幅1位・2位の記録が塗り替えられたわけですが、では続く3位以降の下落幅はどの程度のようなものでしょうか。下の表で確認してみましょう。
◆NYダウ 下落幅(ドル単位)ランキング
※1985年以降のNYダウヒストリカルデータで作成、赤背景は2018年急落期間内日付
下落幅順 | 日付 | 下落幅 (ドル) | 下落率 (%) | 終値 |
---|---|---|---|---|
1 | 2018/2/5 | -1,175 | -4.60% | 24,346 |
2 | 2018/2/8 | -1,033 | -4.15% | 23,860 |
3 | 2008/9/29 | -778 | -6.98% | 10,365 |
4 | 2008/10/15 | -733 | -7.87% | 8,578 |
5 | 2001/9/17 | -685 | -7.13% | 8,921 |
6 | 2008/12/1 | -680 | -7.70% | 8,149 |
7 | 2008/10/9 | -679 | -7.33% | 8,579 |
8 | 2018/2/2 | -666 | -2.54% | 25,521 |
9 | 2011/8/8 | -635 | -5.55% | 10,810 |
10 | 2000/4/14 | -618 | -5.66% | 10,306 |
下落幅ランキングは2000年台が独占
まず見てわかるのが、10位以内に2018年2月の記録が3つも入っている点です。これだけ見ると、今回(2018年2月)は史上最も深刻な下落相場にも見えます。
そして、もうひとつ特徴的なのは、この下落幅ワースト10ランキングが、全て2000年以降の日付で占められている点です。
日付をよく見ると、2000年頃のITバブル、2008年ころの世界金融危機(リーマン・ショック)、2011年の米国債ショックと、歴史的な暴落・調整の時期が並んでいます。
2000年以降の下落幅が大きい理由
とはいえ、この中にブラックマンデーが含まれていないことに気づいた方もいるでしょう。なぜ含まれていないかというと、当時の株価は、2000年代とくらべて相対的にずっとずっと低かったのです。
たとえば、株価がブラックフライデー直前のバブル圏にあった1987年10月、NYダウ最高値は2,700ドル(1987/8/17終値)でした。本稿執筆現在(2018/2/9)のNYダウ株価(23,860ドル)と比べると、今の株価は当時の10倍近くまでふくらんでいるのです。
ここでふたたび、NYダウが史上最大の下落幅を記録した先日2月6日を見てみると、下落幅はマイナス1,175ドル、下落率はマイナス4.60%です。仮に、ブラックフライデー前最高値から同じ下落率で下げても、下落幅はマイナス124ドルにしかなりません。
言ってみれば、2月5日の下落幅が史上最大となったのは、株価下落がそれほど激しかったからではなく、もともとの株価がきわめて高かったから、と考えられます。
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◆NYダウ 下落率(%)ランキング
では今度は、下落幅(ドル単位)ではなく下落率(%単位)ランキングを見てみましょう。
下落幅順 | 日付 | 下落率 (%) | 下落幅 (ドル) | 終値 |
---|---|---|---|---|
1 | 1987/10/19 | -22.61% | -508 | 1,739 |
2 | 1987/10/26 | -8.04% | -157 | 1,794 |
3 | 2008/10/15 | -7.87% | -733 | 8,578 |
4 | 2008/12/1 | -7.70% | -680 | 8,149 |
5 | 2008/10/9 | -7.33% | -679 | 8,579 |
6 | 1997/10/27 | -7.18% | -554 | 7,161 |
7 | 2001/9/17 | -7.13% | -685 | 8,921 |
8 | 2008/9/29 | -6.98% | -778 | 10,365 |
9 | 1989/10/13 | -6.91% | -191 | 2,569 |
10 | 1988/1/8 | -6.85% | -141 | 1,911 |
26 | 2018/2/5 | -4.60% | -1,175 | 24,346 |
※1985年以降のNYダウヒストリカルデータで作成
下落率だと2018年急落はランク外
下落率ランキングを見ると、最も大きな下落率だったのは1987年のブラックマンデー当時で、実にマイナス22%という未曾有のスケールの大暴落であったことがわかります。
なお、この未曾有の下落「率(%単位)」にもかかわらず、下落「幅(ドル単位)」のほうはわずか508ドルにとどまっています。)
一方、今回の2月5日フラッシュ・クラッシュの方は、下落率ランキングワースト10ランク外(26位)に押し出されています。
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◆高値から10%下げるまでの日数比較
では、他の尺度で今回の下落を見てみましょう。
2018年急落:10%超下落まで13日
NYダウは、2018年1月26日に26,616.71ドルで史上最高値を更新して以来、株価は下げ続けています。
この直近最高値から比べると、大幅下落のあった2月8日終値の23,860.5ドルまでは、下落率マイナス10.36%となります。この、直近高値から10%超下げるまでの日数を、いくつかの下落期間で比較してみましょう。
まず、2018年急落のケースでは、直近最高値からマイナス10%を下回るまでは、カレンダー日付ベースで13日かかったことになります。
2008年リーマン危機:10%超下落まで150日
次に、100年に一度の経済危機と言われる、2008年世界金融危機、いわゆるリーマン・ショックについて見てみましょう。
このとき、NYダウが暴落前最高値を記録したのは、2007年10月9日(14,164.5ドル)です。そこから10%下がったのは、年をまたいだ2008年3月7日で、実にカレンダー日付ベースで150日、意外にも5ヶ月程かかっています。
1987年ブラックフライデー:10%超下落まで58日
今度は、史上最悪の暴落と言われた1987年のブラックフライデーについて見てみます。
こちらは、暴落前最高値が8月17日、そこから10%下がったのが10月14日で、カレンダー日付ベースでは58日かかったことになります。
2018年急落は「ペースの早さ」が異例?
こうして、過去の歴史的大暴落と比較してみると、今回の急落(2018年急落)は、最高値から10%超下げるまでの期間が、リーマン・ショックやブラックフライデーよりも遥かに早かったことがわかります。
最高値を記録してから、リーマン・ショックの58日と比べると5倍近く早く、ブラックフライデーの150日と比べると10倍ほど早く、10%の下落が生じています。
当時とは市場環境から金融システムの組成、あるいは市場参加者の特性まで、様々な条件が異なっているため、一概には比較できませんが、あえて言うなら、2018年急落に関しては、急激な株価上昇に対するガス抜きが、きわめて早いスピードで進行していた、と言えます。
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これから大暴落が起きるシナリオを考える
株価が永遠に上がり続けることはない、と言われますが、このことを考えると、2018年急落から調整トレンドに入り、20%から30%といった暴落圏まで値を下げるのも、そう遠い未来ではないかもしれません。
リーマン・ショックのときは、高値からマイナス50%ほど下げて底値に達するまでは、1年5ヶ月(2009年3月)かかっています。
またブラックフライデーのときは、高値からマイナス30%ほどの底値まで3ヶ月(1987年11月末)かかっています。
これらを考えると、2018年急落が調整トレンド・暴落トレンドに入った場合、あと3~4週間でマイナス30%下落、あと2ヶ月かからずにマイナス50%下落、と展開することもありえないとは言えません。
下落率(%単位)から2018年急落の展開を予測してみると・・・
今回のNYダウ2018年急落について、ニュースでは「「史上最大の下落幅(ドル単位)」という点ばかりが強調されますが、より現実味のある指標としては、下落率(%単位)に注目する方法もあるでしょう。
日別の下落率だけを見れば、これまでのワースト10にも入りませんが、直近高値からの下落率が10%を下回るのにわずか15日しかかからなかったことを考えると、今回はかつてないスピードで下げ圧力が増す可能性もあります。
このさきしばらくは、上昇局面に安易に乗らず、警戒体勢のまま市場に参加するようにしましょう。
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