今週のトルコリラ円は、11日に発生した世界的なリスクオフにも関わらず、週後半から堅調に推移しています。
週末12日には、かねてから米・トルコ間で懸念視されていたブランソン氏拘束問題が大幅に進展する可能性が報じられており、これを確度の高い情報であるとしてトルコリラ円は週レンジを上抜けて19.025円まで上昇しています。
今週の動きを振り返りつつ、来週のトルコリラ円レート見通しを発表します。
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今週のトルコリラ円概況
今週頭から12日(金)にかけてのトルコリラ円は、高値18.955円から安値18.329円の取引レンジで堅調に推移しています。
先週末比でもレートは上昇しています。
今週前半振り返り:材料なく横ばい
まず今週の前半、10月8日(月)から9日(火)にかけてのトルコリラ円レートは、高値18.558円から安値18.329円のレンジで、方向感なく横ばいで推移しました。
8日から9日にかけ、材料となる大きなイベントはありませんでした。
ただ、8日には、サウジ政権に批判的なことで知られる在トルコの著名記者が、トルコ国内のサウジ総領事館で殺害された可能性が報じられました。為替への影響は軽微であったものの、報道が事実なら、サウジ・トルコ間の緊張が極めて高まりそうです。
また9日には、トルコで進む高水準なインフレ(=通貨価値下落による物価高騰)への対抗策として、市中金利、全企業の商品価格、電気やガスの料金などを、全て10%割り引く、という政策が、トルコ財務相より発表されました。こちらは内容がお粗末に過ぎるとし、逆にトルコリラの失望売りが出ましたが、影響は限定的でした。
今週後半振り返り:経済指標改善で上昇
続く週後半のトルコリラ円レートは、いったん軟調に推移したのち反発、19円を上抜けて鋭く上昇しています。
まず11日(木)未明2時頃、米中貿易摩擦への嫌気や米長期金利の上昇が端緒となった世界同時株安でリスクオフの動きが強まり、リスク資産とみなされることの多いトルコリラが売られて下落しました。(上図グリーン矢印)
とはいえ、下落の勢いは限られており、11日朝9時頃には下げ渋ったのち、夕方16時に発表のトルコ・8月経常収支が予想を上回る結果となった(前回-17.5億USD、予想+25.0億USD、結果+25.9億USD)ことで、トルコリラは急上昇に転じました。(上図ピンク矢印)
週末:米国人解放の報道に期待で急伸
さらにきょう12日(金)の日本時間未明2時半ころ、トルコリラ円レートがさらに急伸しました。
NBCが報道、確度高いと見て市場が期待
この時刻、米最大手放送局のNBCが、かねてから米・トルコ関係の重しとなっていた米国人牧師拘束問題に関して、拘束されているブランソン氏が釈放される可能性が高いと報じました。
これまで米トランプ政権は、ブランソン氏釈放の要求を行うもトルコ政府が応じず、その報復として、トルコの在米資産を凍結などの経済制裁を行っています。これで窮地に立っているトルコが水面下で米側と交渉を行い、ブランソン氏解放によって経済的な締め付けを解こうとしている、というのが報道の内容です。
司法判断は12日(金)夕方から夜か
ブランソン氏の解放については、現地時間12日に開かれる法廷喚問にて司法が下す決定に委ねられる見通しです。そのため、早ければ12日の夕方にも解放が決まることも考えられます。
もし解放に至れば、トルコ・米国の双方にとって好ニュースであり、とくにトルコリラ円の上昇の勢いは大きくなると見られます。
ただ、数ヶ月前にも同様の報道が出たものの、結果はブランソン氏が勾留から家屋内軟禁へ移されたのみで、解放にはいたらなかったことがありました。今回も事前報道の通りに進むと考えるのは早計であり、情報に重々注意しておく必要があります。
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来週にかけての経済イベントと見通し
まず、なんと言っても12日の法廷喚問の結果は要注目となります。ブランソン氏が解放に至った場合は、トルコリラの買いが大きく勢いづくと見られます。
そして来週には、15日(月)にトルコ・雇用統計、16日(火)に鉱工業生産指数が発表予定です。鉱工業生産指数は前回3.5%に対し予想-2.0%と悪化見込みであり、雇用統計も振るわない結果となった場合、ブランソン氏解放に至ったとしても、いくぶん上げ渋る可能性があります。
来週のトルコリラ円のレンジ推移見通しは、高値20.300円から安値17.700円を予想します。