豪ドル円急落の舞台裏/中銀総裁講演と2019年の豪経済

2月6日、豪ドル円FXレートに、大幅な急落が発生しました。

2月に入ってからおおむね堅調だった豪ドル円レートは、5日に高値79.80円台をつけたところで下げ渋ったかと思うと、明けた6日朝9時に一気に78.00円台まで下落、さらに今日2月8日(金)には77.40円台まで下値を広げています。

・豪ドル円 2時間足(2月)

今月高値比だとマイナス2.4円の下げとなり、下落率は実に3.01%と、極めて強い勢いの下落といえます。

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下落の端緒はRBAの「転換」

下落の引き金となったのは、RBA(豪中央銀行)のロウ総裁による、「利下げ方向への金融政策転換」と取れる発言です。

据え置きの続いた豪金利

この数年間、経済成長を続けてきた豪では、2016年8月から現在までの2年半もの間、政策金利を過去最低の1.50%という水準で据え置いてきました。

これは、金融緩和によって経済活性化をはかったRBAの方針が、思惑通り有効に働いてきた、ということです。

そのためロウRBA総裁はこれまで、「次に政策金利を変えるときは、利上げ方向になるだろう」と発言してきました。

豪経済が順調に成長していく見通しなのでで、いずれ、金融緩和からの出口戦略として、低水準な現在の金利を引き上げることになる、ということです。

金利見通しに生じた「異変」

しかし6日、ロウRBA総裁は、豪政策金利が「引き上げ・引き下げのどちらにも向かう可能性がある」と発言しました。

これは、これまで楽観的だった豪の経済見通しが、このところやや後退しているという意味に解釈できます。

そして、市場の大方も、ロウ発言をこのように解釈しました。その結果、利下げ見通しの強まりと、豪経済減速懸念で、豪ドル円レートの急落につながりました。

もちろん、豪ドル円レートだけではなく、他の通貨に対しても豪ドルは下落しており、全面安の状況となっています。

急落の下地を作った中国失速

さらに、今回の豪ドル安の下地になる要因もありました。中国経済の減速懸念です。

このところの中国経済は様々な面でほころびが見られており、それによる中国の貿易相手国の財政悪化(世界景気減速)も含めた、大きな懸念を呼んでいます。

そして、豪の最大の貿易相手国が、その中国です。

中国に依存する豪経済

豪の貿易相手国第一位は、輸出・輸入とも、中国となっています。(※2016年外務省統計)

割合で言えば、豪の輸出の28%、輸入の18%が、中国を相手国としたものです。

このように大幅な依存度のゆえ、中国経済の減速はそのまま豪経済の見通し悪化に直結します。

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ロウRBA総裁の「ちゃぶ台返し」

今週2月5日(火)には、RBA政策金利発表が行われており、その際には、政策金利の1.50%据え置き決定とともに、豪経済に対し強気な見通しがロウ総裁から語られていました。

それだけに、その翌日、当のロウ総裁本人から出た利下げ可能性についての発言は、市場に驚きをもって迎えられ、強い豪ドル売りの流れへと繋がりました。

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豪経済はいぜん成長見通しも…

このように、豪経済見通し悪化で豪ドルが売られる一方で、ロウRBA総裁の見通しでは、豪経済の成長率見通しは2019年で3%、2020年で2.75%と、減速気味ではあるものの適度な成長が続くとしています。

また、景気指標として重要とされる失業率も、現在の5.0%から、来年にかけ4.75%へ低下すると予想しています。

経済指標がこのような成長基調を示しているにもかかわらず、ロウRBA総裁が今回の利下げ可能性に触れたのは、やはり、以前ほど豪経済見通しが明るくないことの現れといえます。

「堅調」から「今後次第」へと見通し後退

エコノミストの間では、RBA(豪中銀)はもはや、当面は利上げを選択肢と考えてはおらず、少なくとも2020年までは金利が据え置かれるだろう、という声が挙がっています。

しかしその一方で、2020年に豪経済見通しが好転ないし維持されれば、利上げに踏み込む可能性は残っている、ともしています。

要は、以前のような楽観的な状況にはもはやなく、利上げ・利下げのどちらに振れるかは「今後次第」という、判断の難しい状況にあるのだ、といえるでしょう。

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今後の豪ドル円見通しは

今後の豪ドルに関しては、今回の急激な下げの反動として一旦下げ渋り、78円台は回復してもおかしくはありません。

しかし、徐々に円高に拍車がかかりつつあるなかで、中長期的な豪ドルの見通しが、大幅に悲観的な方向に振れたと考えてもよさそうです。

今日のFXレンジ予想/豪ドル円見通しと推移

 

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