超・高金利通貨として知られるトルコリラは、このところFX市場でもきわめて人気の高い、注目の通貨と言えます。
2019年のトルコリラ円は、米利上げ(による金利差縮小)の可能性や、現政権のエルドアン大統領による利下げ圧力、さらには後述のリセッション(景気後退)懸念など、いくつかのリスクで見通しが悪化しています。
しかしその一方で、トルコは中長期的には大きな成長が期待される人口オーナス期の真っただなかであり、中長期的に見れば、トルコリラ上昇の可能性は高いとも考えられています。
さて、このような状況にあって、トルコリラ円FXはどのような考え方をすべきなのでしょうか?2019年におすすめのトルコリラ円トレード方法について考察します。
景気後退期寸前のトルコ経済
まず、目下トルコリラの暗雲となっているのが、極めて苦しい状況下のトルコ経済です。
トルコはかねてからの高いインフレ率に苦しめられていますが、更に現在、トルコ経済は景気後退期(リセッション)の寸前にあると考えられています。(人口オーナスの恩恵としての経済成長余地は、より長い目で見た場合の話になります)
こうした2つの側面について正しく理解することが、トルコリラ円レートを考える上では必須となります。
超高インフレ
トルコは長らく、高いインフレ率に苦しめられています。
インフレ率の指標であるトルコ・消費者物価指数(CPI)前年比は、直近で19.67%ととなっています。
これは、日本の0.2%や米国の1.5%と比べると、トルコが超高インフレ、つまり著しい物価上昇が起こっている状態にあることがわかります。
GDP連続マイナス成長で景気後退期目前
さらに、今週頭3月11日(月)に発表されたトルコ2018年第4四半期のGDP成長率(前年比)は、大幅な悪化(マイナス3%)となっています。
今回に続く2019年第1四半期のGDPもマイナス成長となるのが市場コンセンサスとなっており、2四半期続けてのマイナス成長ということで、トルコは本年中にリセッション(景気後退期)入りすることがほぼ確実となっている状況です。
※リセッション・インフレは織込み済みの見方も
ただ、トルコの経済縮小に関しては、かねてから予想されていたことでもあり、トルコリラ円レートはおおむね織込み済みと考えることができます。
このことから、今後リセッション入りの報が届いたとしても、トルコリラ円レートへの影響はそれほど大きくはならない見通しです。
トルコリラが底堅いわけ
ともかく、このように、経済的には苦境にいるはずのトルコですが、トルコリラ円レートは昨年2018年8月に15円台で底打ちし、2019年以降はじり安(円高方向)展開ながらも20円台を維持しています。
このように、トルコリラが底堅いのはなぜなのでしょうか?
通貨安をとどめるトルコの高金利
それは、トルコ政策金利が高い水準で維持されているからです。
現在のトルコのような高インフレの状況下では、政策金利を引き上げることによって通貨の価値を高め、国際的な通貨価値を維持し、また物価高に対処することが定石とされています。
この定石どおり、トルコ中銀は、粛々と高水準な利上げを行ってきました。
2017年には8%とすでに高水準だったトルコの政策金利ですが、インフレがさらに進行した昨年5月には二倍の16.5%、さらに同年9月には、年初の三倍となる24%にまで引き上げられています。
利上げ=「金融引き締め」
ただ、FX市場ではトルコリラの価値安定化に寄与する政策金利引き上げですが、これは、トルコ国民から見れば、金利引き上げによりお金が借りにくくなり、お金を使いにくくなってしまうという、いわゆる金融引き締めにほかなりません。
そのため、トルコ国民は、高インフレという難局から目をそむけ、その場しのぎとはいえお金の流通量が増えると考えられる「金利引き下げ」を望んでいる向きも大勢います。
利下げをもくろむエルドアン大統領
そこに目をつけたのが、現在トルコで独裁政権をしくエルドアン大統領です。
エルドアン大統領は、国民からの支持率向上のため、トルコ中銀に対して、利下げを行うよう様々な局面で圧力をかけ続けています。
そのため、エルドアン大統領から、利下げをトルコ中銀に促すような発言が出ると、「インフレなのに利下げだと、トルコ経済が自分の首を締めることにしかならない」との見通しから、トルコリラ円レートが下げることも多々あります。
ただ、現在のところ、トルコ中銀はエルドアン大統領の意思に屈するような兆候は見られず、利下げどころか追加利上げの可能性すら示唆しているため、中銀の独立性が保たれている可能性が高いとして、FX市場では大きな懸念は呼んでいないようです。
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トルコリラと統一地方選挙
トルコリラ円レートに影響しうるイベントとしては、本年3月31日に実施予定となっている、トルコ統一地方選があります。
こちらは、首都アンカラや、最大の貿易都市イスタンブールの市長を選出するものとなり、この結果いかんでは、エルドアン政権、ないし与党AKPの支持率に大きな影響が出ます。
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「人気取り」に出るエルドアン政権
さて、トルコの経済減速の原因であるトルコリラ下落はもともと、エルドアン政権、ないし現与党であるAKPが米国との対立を深めたことなどが原因となっています。
そのため、この統一地方選でのAKP勢力は苦戦する可能性もあります。
これに対処するため、エルドアン大統領は、先述の利下げ正当化や、国内のインフレ(物価高騰)対策としての野菜価格の抑制政策など、国民からの人気取りのためのスタンスを打ち出しています。
ポピュリズムとトルコリラ
ただ、トルコ国民の人気を得られる政策は、えてしてトルコリラの価値下落につながるものでもあります。
例えばエルドアンは、アメリカを対立国家と見立て、アメリカに屈しない「強いトルコ」を演出することで、国内の支持を高めようとすることがあります。しかし、大国アメリカとの対立は、国際的には百害あって一利なしと言え、トルコリラのいっそうの下落に繋がりかねません。
強硬姿勢は「ポジショントーク」?
とはいえ、エルドアン政権も、内心では、米国との対立によって失うものが大きいことは、じゅうじゅう承知しているはずです。
そのため、地方統一選前の現在は強硬な発言が目立つ一方で、これらの発言はポジショントーク、つまり人気取りのための「芝居」を打っている可能性も指摘されています。
そのとおりであった場合は、与党が地方統一選で勝利できれば、このところの強硬な態度は一転引っ込むのではないか、との見方も出てきています。
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2019年のトルコリラ円 おすすめ取引法
従来からの超高インフレに加え、リセッション目前の経済状況、そして、地方統一選を控えたエルドアン政権による地政学的リスクの高まりなど、目先の材料を見ると、トルコリラの見通しはかなり暗いものにも思えてきます。
しかし、ひとたび状況を整理してみた結果、これらの問題がいずれもトルコリラの下落を引き起こすかというと、案外そうでもない、と言えます。
リスクを整理して考え、今年2019年におすすめのトルコリラ円取引方法を考えてみます。
見通しは真っ暗…ではない?
むしろ、トルコ中銀が独立性を保っている限りにおいて、超高インフレ対策としての利上げ可能性は維持されています。
すでにリセッション寸前の経済状況は憂慮すべきですが、一方で、トルコリラ円レートはすでに織込み済みとも考えられます。
また、エルドアン政権の強硬な姿勢による地政学リスクの高まりは、3月の地方統一選へ向けたポジショントークでしかない可能性も高く、地方選に勝利さえすれば、けっきょくは霧散することが考えられます。
このように、それぞれのリスクは見通しが明るいとも考えられ、現在の状況が続くかぎりにおいては、少なくとも、トルコリラの下値は限定的と言えます。
短期や高レバは極力避ける
新興国通貨の常として、トルコリラ円も、短期的には大きく振れる可能性が高い通貨セットです。
そのため、大きな金額が動き強制ロスカットのリスクが高まる高レバレッジ取引は、よほど資金に余裕がある場合でない限り、極力避けたほうが懸命です。
長期保有前提のノンレバ取引がおすすめ
しかし一方で、スワップポイントや長期でのレート上昇を期待した現物取引(レバレッジ1倍)であれば、現在のトルコリラ円参入は、悪手ではないと言えます。
今ロングのポジションを保つ場合は、スパンとしては2年から5年、あるいはそれ以上の保有期間を想定するのがよいでしょう。
ただし、これだけの長期間に資金が固定されるということを踏まえての話です。したがって、余裕資金での取引は必須条件と言えます。
総合するに、長期保有を前提としたノンレバ取引であれば、余裕資金を投入することで、比較的安定して利益を得られる可能性が高いと言えます。
今日のトルコリラ円レンジ予想
今日のトルコリラ円レート見通しは、次のURLをご覧ください。