先週のトルコリラ円は、対米関係の大幅改善見込みから、ほぼ一貫して堅調な推移をたどり、一時はレートめやすの20円を上抜ける展開となりました。
一方でサウジ記者殺害事件を発端とした中東情勢の不透明化がレートの重しとなっており、今週木曜に予定されているトルコ政策金利の発表もレートに大きなインパクトを与えそうです。
先週の動きを振り返りつつ、今週の見通しとトルコリラ円レンジ予想を発表します。
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先週のトルコリラ円:ほぼ一貫して堅調
先週15日(月)~19日(金)のトルコリラ円レートは、高値20.4円から安値18.9円のレンジで堅調に推移し、先週終値比で上昇しました。
なお18日(木)には一時、節目となる20円を上抜けて推移しました。
地合い良好、一時20円台回復
先週前半となる月曜から水曜、トルコリラ円はほぼ一貫して堅調に推移しました。
材料としては、トルコに拘束されていた米国人牧師ブランソン氏が解放に至り、米国との関係改善見込みが高まったこと、そして米株高によるリスクオフムードの後退があり、これによってトルコリラ円レートは、18日には節目とされる20円を上抜けていました。
週後半には上値追いの勢いを失い20円を割るも、地合いが大幅改善したトルコリラ円レートの下値は固く、ときおりまた20円台を戻しつつ19.9円前後で推移、そのまま週を終えました。
8月「トルコリラショック」からは立ち直りか
20円はトルコリラ円にとってひとつの目安となる数字でした。というのも、ことし8月まで長い下落トレンドにあったトルコリラが、「おそらくここで下げ止まるだろう」と引き合いに出されることが多かったのが、この20円という下値サポートラインだったためです。
そこへ、今年8月に発生したトルコリラ急落(トルコリラショック)で、トルコリラ円レートは20円を一気に下抜け、市場の動揺を呼びました。
しかし、このところの対米関係改善見込みからレートは次第に戻し、先週ようやく20円に達したかたちとなりました。さらに20週移動平均(20MA)へのタッチもあとわずかというところで、ようやくトレンド反転期待が持ち上がってきたところでした。
今週のトルコリラ円見通し:良地合いも波乱警戒を
今日22日(月)のトルコリラ円レートは、高値20.0円から安値19.7円の狭いレンジを横ばいに推移しています。
25日(木)政策金利発表
今週はなんといっても、25日(木)に、トルコ中銀による政策金利発表が控えています。
トルコのインフレ率は最新値で24%(2018年9月、昨年同期比)と、極めて高い水準に達しており、それによってトルコ経済は大きな打撃を受けているほか、トルコリラのレート下落も引き起こしてきました。
こうした場合は、通貨価値上昇をねらって政策金利を引き上げ、インフレ収束をはかるのが、経済史的には定石になります。
トルコ中銀も先月9月には金利を24%という超高水準に引き上げたものの、利上げに否定的なトルコ大統領エルドアンの圧力があったことから、利上げ対応はスピーディであったとは言えず、市場では「遅きに失した」との声も聞かれていました。
・トルコリラ円(ローソク)と短期金利(トルコ2年国債、青線) 月足
今回の政策金利は据え置き予想となっていますが、エルドアン大統領は過去にも利上げに対し否定的な発言をしており、そのたびにトルコリラ円レートも大きく揺さぶられてきたため、今回も何が起こるかわからず、要警戒となります。
23日(火)サウジ懸念へ声明発表
サウジ記者カショギ氏の死亡事件も世界からの注目を集めており、こちらのリスクへの警戒もトルコリラ円レートの重しとなっています。
二転三転する説明を繰り返すサウジアラビア側に対し、米国とトルコは結託して批判的姿勢をとっており、さらに対立が深まって中東情勢の不安定化につながる可能性も否定はできません。
この問題に関しエルドアン大統領は、23日(火曜)になんらかの声明を出すといい、その内容にも注目が集まっています。トルコ時間は日本時間に対し6時間遅れとなり、23日の日本時間午後から夜にかけ、声明発表とともにレートが大きく触れる可能性もあります。
来週の経済イベントとレンジ予想
今週、もし悪材料が出るとしたら、まず次の2つが考えられます。
・エルドアンによる政策金利発表前の利上げ批判
・サウジ事件に関するエルドアン声明での中東情勢悪化
今のトルコリラ円レートは、対米関係の改善見込みにより好地合いにあると言えますが、これらが実現した場合はインパクトが大きくなると考えられるため、今週はレンジの下振れリスクに備える必要があります。
今週のトルコリラ円レートは、高値20.5円から安値18.3円のレンジを予想します。