今週のトルコリラ円レートは、良好な地合いに原油安も追い風となって週前半に堅調に推移したものの、週後半にさしかかってインフレ懸念など悪材料が続き急落、週間の上げ幅をほぼ帳消しにする展開となっています。
今日までの動きを振り返りつつ、今週末のトルコリラ円レートについて見通しを発表します。
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今週のトルコリラ円概況
今週29日(月)から今日1日(木)にかけてのトルコリラ円レートは、高値20.680円から安値19.855円のレンジで推移しており、先週終値比では小幅に上昇しています。
政策金利と原油安が追い風に
週前半の29日~31日は、トルコ・政策金利据え置き決定での懸念一服に加え、さらに原油安も追い風となり、トルコリラ円レートは終始堅調に推移しました。
原油安とトルコリラ円レートの相関は、トルコの経常赤字の大部分が原油輸入コストであり、原油安がそのままトルコの赤字縮小へとつながることで説明できます。
次のチャートを見ると、31日までの原油とトルコリラ円レートがきれいに逆相関していることがわかります。
減税政策でインフレ悪化懸念浮上、急落
しかし、31日の夜10時半頃になり、トルコリラ円レートが急落しました。
ここでは、トルコの財務大臣より「景気刺激のための減税計画」が発表されたことが材料となりました。
減税にかけた政権の期待と市場の反応
トルコは高水準なインフレに苦しんでおり、インフレを抑えるためにトルコ中銀は金融引き締め(政策金利を上げ、市中に出回るお金を減らそうとする)で景気を冷やそうとしています。
しかしトルコのエルドアン政権は、国内の支持率安定化のために、金融緩和(政策金利を下げ、市中に出回るお金を増やそうとする)で景気を上げようと考えています。
先日の政策金利発表では、政権がトルコ中銀に対し利下げ圧力をかけるも中銀は応じず、高い政策金利が維持されたことで市場の好感を得て、トルコリラレートは上昇に向かいました。
しかし、今回発表された減税計画は、逆に景気を過熱へ向かわせるものであり、インフレをより進行させる懸念があります。
悪材料続き一段安、一時20円下抜け
このようにして、31日の減税政策発表がトルコ経済の見通し懸念悪化へとつながり、市場はこれを嫌気、トルコリラ円レートの急落へと繋がりました。ただ、この際レートは直近高値20.6円から安値20.1円で踏みとどまり、節目の20円は下抜けず11月1日に入りました。
しかし、欧州時間が始まる直前の16:30頃には再びレートが急落、一段安となってついに20円の抵抗線を下抜けました。
17時現在のレートは19.960円周辺と、20円のほんの手前をやや下げ渋り気味に推移しています。
この急落に前後して、トルコが40億リラ(約4500億円)を国債償還のために借り入れる計画を明らかにしています。急落は、これを懸念材料として売りがかさんだものと見られます。
今週末のトルコリラ円見通し:底堅さ意識
このようななか、今週末にかけてのトルコリラ円見通しを読むうえで、一度視線を週足チャートに戻してみると、中期的にはいまだトルコリラ円レートが上昇トレンドにあることがわかります。
悪材料連続も地合い底堅い
これは、政策金利維持による先行き懸念の後退のほか、対米関係改善の兆しや、サウジ記者殺害事件にからんだ国際社会におけるトルコの存在感向上によって、市場の中期的見通しが改善しており、レートの支えとなっていることが原因と考えられます。
きのうから今日にかけて悪材料が連続し、ついに20円を下抜けたにもかかわらず、週足では小幅上昇を維持し、20円台へ戻る勢いを失っていないなど、きわめてボラティリティの高いトルコリラにしては底堅さを意識させる展開となっています。
週末は先週終値圏で推移か
週末に特段の経済イベントは予定されていませんが、いくつかの悪材料から、週末にかけ週間安値圏で上値重く推移する可能性は高いでしょう。
とはいえ、これ以上大きく下抜けるほどのモメンタムも感じられず、今週も先週終値の19.985円周辺で引ける可能性があります。