「より簡単にお金を増やそう」と思ったとき、多くのトレーダーが検討するのが、スワップポイント(スワップ金利)狙いの中長期投資です。
外貨を持ってさえいれば何もしなくてもお金を増やせる仕組みがスワップポイント、と思っているトレーダーも多いものですが、実際は、そこまでかんたんな資産運用法でもありません。
この記事では、FXにおけるスワップポイントとは何か、どこが難しくて、どのように取引すれば安定して儲けを出せるか、を、初心者向けにやさしく解説します。
スワップポイントとは
FXで、外貨を買ったり売ったりして、そのまま決済せず持っていると、買ったときにはお金が少しずつ増え、売ったときには少しずつ減ります。
この仕組みを、スワップポイントと呼びます。
まずは、スワップポイントが発生する仕組みについて説明します。
買いで入ればスワップは受け取れる
スワップポイントとは、FXで外貨を買って持っているあいだは毎日もらえる、利息のようなもののことです。
例えばSBI FXで豪ドルを1万通貨買うと、その1万豪ドルを保有している間は、スワップポイントとして、毎日35円があなたの口座に入ってきます。(SBI FX公式サイト参照、2018円12月12日調べ、以下同)
売りで入ればスワップは引かれる
一方、FX外貨を売り持ちしている場合、つまり「売りから入った」場合、今度は毎日少しずつお金が差し引かれていきます。この場合で言えばスワップポイントは利子のようなものです。
例えば、同じくSBI FXでは、豪ドルを1万通貨売り持ちした場合、毎日37円が出ていきます。
このように、ポジション(買い・売り)によって、少しずつ資金が増えたり(買い持ちでの利息収入)、少しずつ資金が引かれたり(売り持ちでの利子支払)するのを、スワップポイントと呼びます。
きわめて小さい銀行の預金利息
外貨を買い持ちしているときは、スワップポイントが毎日入ってきます。これは、銀行の預金利息と似ています。
しかし、現在の日本では、貯金による利息はほとんどないに等しい値です。例えば2018年12月10日現在のゆうちょ銀行の通常貯金の年金利は、なんと0.001%、つまり10万分の1です。
これだと、100万円の資金を預けても、1年でもらえる利息額はわずか10円ということになります。
FXのスワップポイント(利息)はずっと大きい
一方、FXで外貨を買い持ちしていた場合のスワップポイントによる利息相当額は、どのようになるでしょうか。
仮に、豪ドルを1万通貨、円で買った場合を考えてみます。
現在(2018年12月)の豪ドル円レートは、1豪ドル=およそ82円です。これを100万通貨(1万豪ドル)買ったとすると、82×1万=82万円となります。
SBI FXのスワップポイントで言えば、豪ドルを1万通貨持っていれば毎営業日にスワップポイントとして35円/日が入ってきます。
そして、1年に営業日が仮に245日あり、スワップポイントがその間変動しないとすると、理論値としては、35円×245日=8575円/年のスワップポイントがもらえる計算となります。
レバレッジを考えると
しかもFXには、自分の資金の何倍ものお金を運用できるレバレッジという仕組みがあります。これを利用し、たとえばレバレッジ10倍で豪ドル1万通貨を買い持ちしようとした場合は、82万円の10分の1で、=必要資金8.2万円で済むことになります。
したがって、レバレッジ10倍で試算すると、8.2万円の資金を使って一年に8575円増やすことができることになります。
これは利率でいうと10.5%という数字になります。
FXスワップ利率理論値は、預金の「1万倍」!?
ここまでの年利の理論値計算を整理してみると、次のようになります。
運用方法 | 資金 | 利息/年 | 利率/年 |
---|---|---|---|
国内預金 (ゆうちょ銀行の場合) | 100万円 | 10円 | 0.001% |
FX (SBI FXの場合) | 8万2000円 | 8575円 | 10.500% |
豪ドル円レートおよびスワップポイントが変動しないと仮定した場合、貯金の場合は0.001%であるのに対し、FX買い持ちのときの年利理論値は10.5%ですから、その違いはなんと1万倍以上ということになります。
とはいえ、スワップポイントは「ただ買い持ちすれば手に入るお金」というわけではありません。安定してこのスワップポイントを受け取るには、相応の準備、あるいは資金が必要になるためです。
スワップ狙いの長期投資は可能か
スワップポイントを単純に銀行の利息収入のようなものと考えてしまうと、つい少ない資産(=高レバレッジ)で長期投資(=1年~数十年の長期間買い持ち)したくなるものです。
しかし、実際はそう簡単には行きません。というのも、とくにレバレッジをかけたFXトレードの場合、長期保有によって強制決済のリスクが高まるためです。
強制決済での損失リスクを試算しよう
強制決済とは、レバレッジをかけてポジションを持っているときに、急激な為替レート変動によって証拠金(FX会社に預け入れている、レバレッジ運用の担保となる資金)が足りなくなり、強制的に反対売買によって決済されてしまう仕組みのことです。
例えば、レバレッジ10倍で豪ドルを1万通貨買って持っている場合を例に考えてみましょう。
※わかりやすいよう、手数料などは省いて考えます。
豪ドルを1万通貨、つまり82万円ぶんの豪ドルを買い持ちしたいとして、資金を小さくすますために10倍レバレッジで取引したとします。すると、FX口座に入れなければならない必要証拠金の額は、10倍したら82万円になる金額、つまり8万2000円となります。
先程考えたように、この1万豪ドルを1年間持っていれば、理論的にはスワップポイントが8000円以上もらえることになります。しかし、この1年間に豪ドル円レートが11%急落(ー9.02円)したら、82万円出して買い持ちした1万豪ドルの価値は72万9800円となり、ー9万200円の減価となります。
すると、レバレッジ10倍で入れた必要証拠金8万2000円では足りなくなってしまうため、FX業者によって強制決済が発動します。つまり82万円で買った1万通貨を、強制的に72万9800円で売り払われ、手元には売買差額のー9万200円が損失として残ることになってしまいます。
レートの急変はいつでも起こりうる
この例で言えば、当初は、8万2000円という比較的少ない資金で一年8575円のスワップポイントを得ようと考えていたのに、レートの急落が起きたために、結局マイナス9万円以上の損失が出てしまったわけです。
レートが急落した想定ということで、少々極端な例に思えるかもしれませんが、実はそう極端な例でもないのが、FX取引の注意すべき点です。
というのも、通貨レートが突然大きく動くのは、歴史上そう珍しくないからです。
極端な例を探せば、2008年前後に起こったサブプライムローン世界金融危機(リーマンショック)、あるいはそれ以前のITバブルや日本バブル崩壊、あるいは最近なら中国株価暴落(チャイナ・ショック)など、上記のような急激なレート変動が起こった例は枚挙にいとまがありません。
スワップ狙いの長期保有なら低レバレッジが必須
こうした市場大変動の起こる時期を性格に予測することは、誰にもできません。言い換えれば、レートの急変動はいつでも起こりうるものであり、FX通貨を長期にわたって保有するということは、それだけレート急変に遭遇する確率も高くなるということになるのです。
こうなると、小さな資金で(=レバレッジを大きくして)外貨を買い持ちし、1年あるいは数年に渡って長期保有して高いスワップ金利を得る、というのが、実は簡単ではないことがわかります。
むしろ、長期保有でスワップ金利を狙うなら、通貨変動にも耐えられるだけの余裕のある証拠金を入れる(=レバレッジを小さくする)必要がある、ということになります。
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スワップ投資向けレバレッジ倍率は?
では、スワップ金利狙いで中長期保有する場合、レバレッジはどれほどにすればいいのでしょうか?
通貨ごとにボラティリティは異なる
といっても、レート変動の幅や頻度(=通貨のボラティリティ)は通貨によって異なるため、一概には言えません。
例えば、FXでも最も取引されている通貨である米ドル円なら、ボラティリティは比較的落ち着いていますが、最近高金利(=高スワップポイント)で人気のトルコリラ円などは、極めて高いボラティリティとなっています。
豪ドル円1年買い持ち、レバレッジは何倍?
なのでここでは、これまで説明してきた豪ドル円を例に、10%の下落に耐えるための証拠金を考えてみます。
82円を1万通貨で82万円、これをレバレッジ10倍なら8万2000円ですが、10%くらいの変動なら1-2ヶ月という期間でわりとよく起こります。なので、レバレッジを5倍にしてみましょう。
すると、必要証拠金は5倍したら82万円になる金額、つまり82万円÷5=16万4000円となります。これなら、1-2ヶ月と言わず、1年くらいなら余裕が持てそう(10%程度の変動なら耐えられる)です。
豪ドル円を10年買い持ちなら、レバレッジは何倍?
しかし、さきのリーマンショックの年などは、様々なリスク資産が半分以上まで減価しました。
そこで、少なくともリーマンショックほどではない暴落、つまり半値=50%以内の下落にも耐えられるレバレッジを考えると、レバレッジ2倍以下となります。
豪ドル円1万通貨で考えれば、82万円の半分=41万円です。これなら、歴史上まれに見る暴落が来ても、強制決済を免れる可能性は高まりそうです。
なお、一般に、こうした金融危機や相場暴落は、10年に1度起こる、と言われています。とすれば、レバレッジ2倍以下なら10年ほどは買い持ちできるかもしれません。
しかし10年間に50%以上の減価、つまりリーマンショック級のが起こらないとは誰も断言できず、したがって、ほんとうに10年持つかどうかはわかりません。
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実は難しいスワップ長期投資
このように見ると、スワップ金利狙いの長期保有というものが、思ったほど簡単なことではない、ということがわかります。
単純に金利として考えることができれば、スワップ金利狙いの長期投資はきわめて魅力的に映るものの、実際には通貨レートは常に変動しており、いつ急落急騰が起こるかわからないために、むしろリスクの高い投資法でもあると言えます。
「楽して金利がほしい」人に最適なのは
こう考えると、最もリスクなく安全に資産運用をする方法は、世界いちの安全通貨と言われる日本円を現金で、かつ微々たるものとはいえ金利までつけて運用すること、つまりゆうちょ銀行に0.001%の金利で預金しておくこと、となります。
ゆうちょ銀行が一番楽、というのは、FXスワップポイント投資に夢を抱いていたトレーダーからすれば、少々がっかりするような結論のようでもありますが、裏を返せば、それだけ経済状況が安定しており減価しにくい通貨(日本円)を豊富に持てているということでもあります。
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まとめ – スワップ投資もリスク資産である
結局FXもリスクのある資産運用方法であり、少しでも安全なようなスワップ狙いの長期投資ですら、左うちわで金利生活ができるような投資方法ではないということです。
したがって、いざスワップ狙い長期投資を始めるなら、流通量が桁違いに多くボラが比較的低いと言われる米ドル円FX、もしくはユーロや豪ドルといった通貨で、それなりの額の証拠金を積んで急落に備えつつ安全策をとるのが、最も利益が期待できる方法と言えます。
また、スワップ狙いの投資を行いたいとしても、その前にFXの売買差益(キャピタルゲイン)狙いの短期・中期投資で、リスク資産運用の経験を積んでからの方がよさそうです。
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